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人道問題地中海のボート難民、EU失政の代償
海を渡ろうとした中東や北アフリカの死者が昨年の3000人から急増している理由
歓迎されざる客 イタリアは昨年秋から難民の捜索救助活動をやめた Ciro De Luca-REUTERS
暖かくなって海も穏やかになると、中東や北アフリカから地中海を命懸けで渡る難民の季節がやって来る。先日もリビア沖で難民船が転覆。最大で900人が犠牲になった可能性があり、史上最悪規模とみられている。
国際移住機関(IOM)によれば、今年これまでに地中海で命を落とした難民の数は約1700人。昨年同時期の死者数は56人だから、今年はその30倍以上だ。海上からの難民の総数は減っているため、母数が増えたからという説明はつかない。
死者数急増の主因は、イタリア政府が昨年10月から難民の捜索救助活動をやめたことだ。政府は月900万ユーロの高額経費や国民の反対を受け、EUの国境警備を担う機関フロンテックスに委ねることにした。
だがフロンテックスは自前の船も監視装備も持っておらず、EU加盟国からの供与が頼り。しかもその任務は難民救済より国境警備に主眼が置かれている。
昨年1年間の死者数は3279人に上った。今年はこの10倍近くになる可能性があると、IOMは警告している。
From GlobalPost.com特約
[2015年5月12日号掲載]