最新記事

朝鮮半島

軍事境界線のクリスマスツリーに北が激怒

韓国では宗教行事だが、北朝鮮にとっては「心理戦の道具」

2014年12月3日(水)15時40分
エリオット・ハノン

祈りは通じる? 毎年クリスマスに電灯で飾られていた鉄塔。今年再建の予定 Jo Yong hak-Reuters

 家の庭に電灯をたくさんつけた巨大なクリスマスツリーを立てる時には、ご近所への配慮も必要だ。隣の家のクリスマスの電飾が窓からピカピカ見えたら、それこそ近所迷惑だ。そして隣の住人が「北朝鮮」である韓国では、この話はもうちょっとややこしくなる。

 今週、韓国国防省は、北朝鮮との軍事境界線の近くの丘の上に、キリスト教団体が高さ約9メートルのクリスマスツリーを設置することを許可した。まったく問題ないように思える。その大きさのツリーが、宇宙から見えることもない。

 ただ唯一の問題は、北朝鮮がクリスマスを嫌がっていること。ウォールストリート・ジャーナルによると、北朝鮮はこれまで「宗教を独裁的指導者への脅威とみなし、常に(境界線付近での)クリスマスツリーの設置に反対する声明を出してきた。ツリーを『心理戦の道具』と呼び、砲弾で攻撃すると韓国を脅した」

「ツリーの点灯は1971年に当初は宗教行事として始まった。ところが北朝鮮側からはきらびやかな電飾が見えるため、『心理戦の道具』とみなされた」と、韓国の聯合ニュースは報じている。

「2004年に南北が宣伝活動をやめることで合意するまで、鉄塔(当時は鉄塔をツリーに見立てて電灯をつけていた)は毎年クリスマスの時期に点灯された。その後は、共産主義国である北朝鮮を挑発しないようセレモニーはしばしば中断されたが、韓国海軍の哨戒艦『天安』が北朝鮮に撃沈された2010年以降、ツリーが復活した」

 昨年までツリーとして点灯された鉄塔は、老朽化を理由に今年10月に韓国軍に撤去されたため、キリスト教団体はその代わりのツリーを再建することにした。北朝鮮の指導部は今年の冬、どう反応するだろうか。

© 2014, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マレーシア中銀、政策金利据え置き 予想通り

ワールド

韓国空軍機がソウル近郊で民家誤爆、15人負傷 米と

ビジネス

セブンが社長交代、北米コンビニ上場へ 30年度まで

ビジネス

連合、25年春闘の賃上げ要求は平均6.09% 32
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行為」「消費増税」に等しいとトランプを批判
  • 4
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 5
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 10
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 8
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中