最新記事

貿易自由化

中身なき中韓FTAでもあの食材が窮地に

農産物は車など主力製品が対象外となるなか、意外な犠牲者が

2014年12月2日(火)16時37分
前川祐補(本誌記者)

危うい伝統 韓国産キムチは過去のもの? Ann Hermes-The Christian Science Monitor/Getty Images

 先週、北京で行われた中韓首脳会談で両国間の自由貿易協定(FTA)が妥結された。しかし「自由」とは名ばかりで、農産物や自動車など互いの主力商品が関税撤廃の対象外になり、協定の効果はほとんどないとみられている。

 その一方で、このFTAを憂える声が韓国内で高まっている。伝統食材であるキムチが、FTAをきっかけに中国産に乗っ取られるかもしれないのだ。

 韓国では、地元の素材にこだわった各家庭オリジナルのキムチを、子供や孫の世代に伝えていく文化が根付いている。キムチは昨年ユネスコの無形文化遺産にも選ばれた。しかし、核家族化でそうした習慣は失われつつあり、若い世代はそもそも手間のかかるキムチ作りを嫌う。こうした背景から、最近は輸入された安価な中国産キムチが売り上げを伸ばしている。

 韓国は当初、キムチをFTAの対象品目から外すことを中国側に申し出たが、あえなく却下された。今後は大量消費される外食産業などを中心に安価な中国産キムチが増え、国産が危機に瀕するとの見方もある。

 韓国産キムチは本当に過去の「遺産」となるかもしれない。

[2014年11月25日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マレーシア中銀、政策金利据え置き 予想通り

ワールド

韓国空軍機がソウル近郊で民家誤爆、15人負傷 米と

ビジネス

セブンが社長交代、北米コンビニ上場へ 30年度まで

ビジネス

連合、25年春闘の賃上げ要求は平均6.09% 32
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行為」「消費増税」に等しいとトランプを批判
  • 4
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 5
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 10
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 8
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中