最新記事

中国社会

愛犬ブームの広がりに神経とがらす共産党

豊かになって犬を飼う人が増えているが当局は「プチブル的退廃」として規制を強化

2014年10月1日(水)16時51分
パトリック・ウィン

毛沢東もビックリ 都市部では生活の欧米化が進み、こんな光景も珍しくなくなった(上海) Aly Song-Reuters

「中国の街中をこそこそ歩き、地雷のようにふんを落とす犬たち。彼らは社会の平安と調和を乱す。中国共産党にとってペット犬は現代の脅威だ。都市部の中国人は欧米の愛玩犬に夢中になり、欧米の生活様式のがさつでばかげた物まねをしている」

 中国共産党の機関紙、人民日報に最近こんな論説が載った。中国の都市における「犬の蔓延」を嘆き、「地雷」を片付けない飼い主からは犬を取り上げるべきだと論じたものだ。

 もっともこの論説の執筆者も、ペットを飼う習慣が広がったのは中国が豊かになったからだと認めている。国連の推定では、2030年までに中国の中間層人口はアメリカの4倍になる見込みだ。車や薄型テレビが普及し、プードルなどのペット犬を飼う人も増えている。北京では飼い犬の登録が12年に100万件に達した。

 ペット批判の背景には、思想統制の強化がある。当局が目の敵にするのは「社会の調和を脅かす」主義主張だ。民主主義や個人の権利、インターネット利用の自由もブラックリストに含まれる。共産党の内部文書は、「中華民族の偉大なる復興」に対する重大な脅威として、この3つを挙げている。

 昨年夏、「9号文件」と呼ばれる党の内部文書が外部に流出した。文書は欧米思想の浸透が社会の平安を脅かし、個人の選択権や言論の自由が「浸透の突破口」になると警告している。

番犬や食用犬ならいい

 現代中国の建国の父、毛沢東が今の中国を見たら腰を抜かすだろう。毛は農民を称賛し、「小ブルジョア的個人主義」を罵倒した。今の共産党指導部は、大衆に再び毛沢東思想をたたき込もうと躍起になっているようだ。毛沢東の文化大革命時代には、犬を飼う人はエリート主義者として糾弾された。

 中国の法律では、個人の生活にもさまざまな規制がかけられる。ペットの飼育もそうだ。80年代まで北京では犬を飼うことは禁止されていた。90年代に条件付きで飼育が認められたが、犬の登録に多額の費用が掛かった。登録料が大幅に下げられたのは03年からだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-ウクライナ和平案、米と欧州に溝

ビジネス

豊田織機が株式非公開化を検討、創業家が買収提案も=

ワールド

クリミアは「ロシアにとどまる」、トランプ氏が米誌に

ビジネス

トランプ氏「習氏から電話」、関税交渉3-4週間で終
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 3
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 4
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 8
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 9
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 10
    アメリカ版文化大革命? トランプのエリート大学たた…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 5
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中