最新記事

科学

未来の「お酒」を飲んで二日酔いとおさらば

新しい効能が発見された化合物を使えば、悪酔いしない酒(の代替物)が作れるようになるかも

2013年12月20日(金)15時19分
ジョン・エリクソン

いくらでも飲める? 飲み過ぎとは無縁の「夢のカクテル」ができるかもしれない Danish Siddiqui-Reuters

 楽しく飲んだ翌朝、私たちを襲う二日酔い。あのつらい二日酔いが過去のものとなるかもしれない。インペリアル・カレッジ・ロンドンのデービッド・ナット教授(神経精神薬理学)の言うことを信じるならば──。

 ナットが11月、英ガーディアン紙に寄稿した記事によれば、最近新しい効能が発見された5つの化合物をもとにアルコールの代替物を合成すれば、悪酔いや二日酔いなど飲酒による悪影響とおさらばできるという。

 この代替物は特定の組み合わせの神経伝達物質を刺激し、さらに「解毒剤」としても素早く作用する。頭が痛くなったり怒りっぽくなったり、光に敏感になったりといった症状を取り除くだけでなく、酔っぱらった末のけがやけんか、飲酒運転による事故も防止できるのだ。

 ナットの二日酔いに対する神経科学的研究の起点となっているのは「アルコールは毒である」という揺るぎない事実だ。アルコールは精神医学的にも生理学的にも問題の多い物質で、認知プロセスと身体機能の両方を損なう。

 もし太古の昔から飲まれていたものでなければ、麻薬並みに厳しい取り締まりの対象となっていたかもしれない。人体への害はヘロインやコカイン、覚醒剤以上と言われるくらいだ。

 酒を無毒化するにはまず、アルコールがこうした「副作用」をどうやって引き起こすかを理解しなければならない。

「アルコールが標的にするのは主に、ガンマアミノ酪酸(GABA)という脳内の神経伝達物質だ。GABAは脳を穏やかな状態で維持する役割を担っている」とナットは言う。「アルコールはGABAのこの機能を模倣し、増強することで、飲んだ人をリラックスさせる」

 一方でGABAにはいくつかの種類があり、アルコール以外の物質にも反応する。「だから理論上は、リラックスして社交的になるというアルコールの効果はそのままに、攻撃性を高めたり依存症を引き起こすといった望ましくない効果をなくした代替物を作ることは可能だ」とナットは言う。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

中国、米の半導体貿易政策を調査 「差別的扱い」 通

ワールド

アングル:米移民の「聖域」でなくなった教会、拘束恐

ワールド

トランプ氏、NATOにロシア産原油購入停止要求 対

ワールド

中国が首脳会談要請、貿易・麻薬巡る隔たりで米は未回
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で最も「火山が多い国」はどこ?
  • 9
    村上春樹は「どの作品」から読むのが正解? 最初の1…
  • 10
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中