シリアに総攻撃をかけるハッカー集団
アメリカの軍事介入を回避したアサドだがサイバー攻撃の脅威は止まらない
連帯のしるし アノニマスのシンボルのマスクをかぶってアサド政権に抗議するシリア市民 Muzaffar Salman-Reuters
国際的なハッカー集団アノニマスがシリアのアサド政権に対する攻勢を強めている。最近、シリアの政府機関のサーバーにハッカー攻撃を仕掛け、そこで得た情報をリークしたのだ。今後もシリア政府内のコンピューターシステムを標的に攻撃を続ける予定だ。
アサド政権に対するアノニマスの実質的な攻撃部隊として活動中の「オプ・シリア」は最近、シリア特許庁(SPO)のサーバーへのアクセスに成功し内部資料をリークした。その中には、SPOの業務に関するものやSPO内のファイルに保存されている特許に関する新しい法規制やその宣伝用のイメージ画像などが含まれていた。
オプ・シリアの旗印の下で多くのグループが活動しているため、ハッカー攻撃の明確な目的を知ることは難しい。SPOのサーバーに侵入したグループは、シリア内のどの反体制派の側に立っているわけでもなく、反体制派である自由シリア軍との連携やその他の反アサド軍との連携を宣言しているわけでもない。
しかし今回の活動に関与したあるハッカーは、シリア政府内の全てのコンピューターシステムを標的にすることを検討している、と話す。そして、ハッキングで得た資料を使い2011年以降10万人を超える犠牲者を出した内戦に対するシリア政府の関与を明らかにすることを目指していると言う。
「(シリア政府による)化学兵器の使用を裏付ける資料を見つけ出すことが第1の目的だ。ハッカー攻撃は、『シリア政府に対して我々はまだお前たちを監視している。シリア国民が我々が味方していると気付くまでこの行為を続ける』というメッセージを送る上で最高の手段だ」と、オプ・シリアに参加するアノニマスの関係者は話す。
「シリア軍のセキュリティーシステムにハッカー攻撃を仕掛けられる弱点を見つけ出せたら、もちろん嬉しい。ただ、情報漏えいさせるだけでもシリア政権に恥をかかせることができるし、オプ・シリアの活動に対する注目も高まる」
昨年、シリア内の反体制派はアノニマスのような国際的なハッカー集団を大勢味方につけてアサド政権に対して幾度か攻撃を仕掛けた。12年初めには、アノニマスはアサド大統領のメールアカウントをはじめ政権内のメールアカウントに侵入している。アサド政権がシリア全土のネット回線を遮断すると脅かした昨年11月にも、アノニマスは改めてシリアのハッカーに対する支援を表明した。
しかし、何人かの逮捕者や有罪判決が出たことで、オプ・シリアの活動は今年3月にはほとんど停止した状態になった。一方で、アサド政権寄りのシリア電子軍(SEA)がサイバー戦争において勢力が強めている。
メンバーが流動的なため、今日のオプ・シリアは過去のオプ・シリアとは大きく異なっている。シリア政府が使っている幾つかのコンピューターシステムへの新しい侵入方法を見つけたメンバーもいる。その中で何か政権の弱点を見つけたら、リークするに値するか否かをオプ・シリアの組織内で検討する、とメンバーは話す。