最新記事
イギリスエリザベス女王も巻き込む移民問題
エリザベス女王は、国の発展に貢献する外国人だけを歓迎し、それ以外の者は受け入れないという不寛容な政策を読み上げた
陛下のスピーチ 伝統的な儀式の中で行われた演説だが、中身はサッチャリズムさながら Toby Melville-Reuters
移民規制の強化、民間活力の活性化、福祉の見直し――これが8日に始まったイギリス議会の開会式でエリザベス女王が行った施政方針演説の内容だった。
開会式はイギリスでは極めて大がかりな年間行事で、議場内は金がふんだんに飾られ、女王はきらびやかな王冠をかぶり、おごそかに儀礼が行われる。
この施政方針演説は政府が起草し国王が読み上げるものだ。ここで示された多くの施政方針の中で、最も注目されたのが移民規制だ。
2日の地方選挙で反移民を唱える右派のイギリス独立党が躍進したのを受け、施政方針演説では政府が提出する予定の「国に貢献する移民を歓迎しそうでない者は排除する」ための法案に触れるだろうと見られていた。
演説では具体案には触れなかったものの、間もなく提出されるこの法案が通れば、EU(欧州連合)域内からの移民でも国民健康保険などの社会保障の恩恵が制限される。不法移民対策として、大家は借り手の在留資格の確認を義務付けられることになり、国外退去処分の手続きも簡素化される。
演説では保育、高速鉄道、アスベスト被害者への補償といった国内問題にも多く触れられた。高齢のエリザベスがこういった問題を読み上げるのは大変なことと思う。「演説の起草者は『アスベスト被害による癌』と書くことで女王が『メゾシリオーマ』(中皮腫)という発音しづらい用語を用いないで済むようにした」とアンドルー・スパローはガーディアン紙で書いた。
「わが政府が最優先すべきはイギリスの経済競争力を強めることである。そのために、政府は民間部門の成長、雇用と機会の創出を手助けする」とエリザベスは読み上げた。マーガレット・サッチャー元首相が健在であれば鼻高々であっただろう。
「わが政府は一生懸命働く人が報われる経済を打ち立てることを約束する。福祉を見直し続け、人々が福祉から自立して働く手助けをする」
政府は「懸命に働く人が報われる公正な社会を促すことに努める」ともエリザベスは読み上げた。女王自身は世襲で王位に就いたはずだが......。
From GlobalPost.com特約