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イスラム教パキスタン反米デモの意外な原動力
イスラム冒涜映画に対する抗議デモが拡大している背景には、反米とは無関係な要因も
怒りの矛先 反米スローガンを叫びながら星条旗を燃やすデモ隊(9月20日、東部ラホール) Khuram Parvez-Reuters
ムハンマドを揶揄する内容のアメリカ映画とフランス週刊誌の風刺画掲載に対する抗議デモが、イスラム諸国へ飛び火している。
パキスタンでも反米感情が高まりを見せ、21日には各地で抗議デモが拡大。少なくとも15人以上が死亡、負傷者は数百人に達した。
パキスタン政府はイスラム教の礼拝日にあたる金曜日の9月21日を、預言者ムハンマドをたたえる祝日にすると宣言したばかりだった。しかし結果的には、国民が血を流し治安を悪化させる事態となった。祝日で仕事も学校も休みになったことでデモ参加者が増え、暴徒化したとみる向きもある。
イスラム教徒の欧米に対する怒りは本物だろう。しかし現地では、抗議デモの動機はそれだけではないとみる人もいる。年内に前倒しで実施される総選挙や、低迷する国内経済への不満も関係しているという。
「選挙を控えた年というのは、どの政党も有権者を引き付ける争点を探すものだ。今は、あらゆるものが政治に引っ張り出されている」と、パキスタンのニュースチャンネル「エクスプレスニュース」のタラット・フセインは言う。「その一方で、普段は活動を禁止されている宗教団体が、騒ぎに乗じて自分たちの存在をアピールしようとしている」
確かにデモ参加者が手に持っているのは、政治団体や宗教団体の旗ばかり。活動を禁止されているイスラム教スンニ派の武装グループ、シパ・イ・サハバ・パキスタン(SSP)の旗を掲げている人がいたかと思えば、首都イスラマバードでは政治家に転身した元クリケット選手のイムラン・カーンが演説を行い、人々を熱狂させていた。
オバマの釈明メッセージが無意味な理由
パキスタン政府は、常に穏健派よりも宗教右派を優遇してきたとみる向きもある。「宗教右派はデモの機会を得ることで自分たちの存在感を示すことができる。抗議デモを乗っ取って利用している」と、イスラマバードにあるパキスタン平和研究所のムハマド・アミール・ラナ所長は言う。
フセインに言わせれば、国民の間に蔓延する政府への不満やいら立ちもデモ拡大の要因だ。「国内には失業者があふれている」と、彼は言う。「政府は何の成果も上げていない。仕事のない若者、日々の生活に苦しむ人々は、デモを自分たちの不満を表す機会と捉えている」
アメリカ政府は事態の鎮静化を図るため、パキスタンのテレビやソーシャルメディアを介した広告にヒラリー・クリントン国務長官やバラク・オバマ大統領を登場させ、ムハンマドを侮辱した映画の「内容とメッセージ」を批判するのに躍起になっている。しかし今のところ、大した効果は上がっていないようだ。反米デモが国内問題の「はけ口」になっているのなら当然だろう。