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アフガニスタンタリバン同時襲撃を招いた米軍陰謀論
住民16人を惨殺した米兵の蛮行に見て見ぬふりをした米軍に対して住民は不信感を募らせていた
同時テロ タリバンはカブールの政府庁舎や外国大使館を一斉に襲った(4月16日) Omar Sobhani-Reuters
米兵が住民16人を惨殺したアフガニスタン南部カンダハル州の町ザンギアバッドに入った。途中の道沿いにある集落はことごとく破壊されていた。路肩に散らばる黒焦げの車の残骸は、自爆テロの置き土産だろうか。
一昨年来の大攻勢で、米軍はこの地を基地の町へと変えた。人影の絶えた街路には、1.5キロ置きに検問の米兵が立つ。空には監視カメラを備えた気球が浮かび、昼夜を問わず町の全域に目を光らせている。
それでもロバート・ベイルズ2等軍曹は、誰に気付かれることもなくベラムベイ基地を脱け出し、3時間かけて住民を殺しまくったとされる。
誰にも邪魔されず、彼は少なくとも3軒の民家に押し入った。複数の住民の証言によると、ある家では11人の遺体を積み上げ、火を放ったという。
3月11日の凶行から1週間がたち、遺族や友人たちは今、大きな疑問を抱いている。すぐ近くに米軍基地があるのに、なぜこんな蛮行が見逃されたのか。さまざまな噂と陰謀説が飛び交い、住民の怒りは沸騰している。
ベラムベイ基地は町の中心部にあり、数㌔先には別な基地もある。だがどちらの基地からも、軍曹の乱射事件を止めに来る者はいなかった。
ハジ・ヌール・モハメド(60)にとって、基地にいた米兵があの大虐殺に気付かなかったという話は信じ難い。彼の住む泥れんがの家は、犯行現場の民家と民家の間にある。「あいつの銃撃音は静かな夜空に響き渡った。基地にいた米兵には絶対に聞こえたはずだ」
ベラムベイ基地はモハメドの家から2㌔足らずの距離。夜なら必ず監視塔に当直の兵士がいるから、一部始終が見えたはずだと彼は言う。
アフガニスタンで活動する国際治安支援部隊(ISAF)の広報官は、まだ捜査中なので基地の兵士に銃撃音が聞こえたかどうかは不明だとしている。
複数犯を見たという声も
ISAFからの明確な発表がないため、現地では陰謀説が盛り上がり、そもそも1人の犯行ではないとの声も上がっている。
AP通信によると、アメリカ側はそうした噂を打ち消すため、アフガニスタンの治安当局に対し、軍曹が1人で出頭してきたときの映像を開示したという。
だが地元の農民モハメド・ワディは、彼の親族であり今回の銃撃で夫を失った女性が複数の兵士を見た、と証言している。
「1人の兵士が部屋に押し入り、彼女の頭を床に押し付け、夫を撃った。その後、彼女は庭に兵士が2人いるのを見た」
「アメリカは単独犯と思わせたいのだろう」と、州議会議長のハジ・アクハ・ラライ・ダステギリは言う。「だが現場に居合わせた住民たちは、アメリカが虐殺の真相を隠そうとしていると考えている」
部族の長老ハジ・カーン・アクハは、この事件で堪忍袋の緒を切らし、村を代表して米軍の即時撤退を求める手紙をしたためた。「もはや米軍との共存はあり得ない」と彼は言う。
事件で家族3人が負傷した高齢の村民ハジ・メボーブも、その手紙に署名した1人だ。もう謝罪は要らない、と彼は言う。6年前にも、タリバン幹部の殺害を目的とした米軍の爆撃で住民50人以上が殺されている。そのときも「米軍は二度と一般人は殺さないと誓っていた。もうだまされない」。
長老のアクハが言う。「アメリカはこの地域に学校建設などで100万㌦を投資するそうだ。でも、誰のためだ? 米軍が残るのなら私たちは去る。アメリカは善意で駐留していると言われても、もう誰も信じない」
[2012年3月28日号掲載]