最新記事
中東シリアでエスカレートする人道への罪
「アラブの春」を暴力で潰そうとする残虐非道に国際社会の非難は高まる一方だが、アサド政権は聞く耳も持たず
デモの陰で 女性や子供も含む多くの市民が連れ去られ、拷問され、殺されている(写真は7月、シリア中部の都市ハマ) Reuters
自国民の拷問や殺りくを続けるシリアに重い制裁を加えるべきだ――アラブ連盟加盟国の財務相会合は今月26日、反政府運動を暴力的に潰そうとするシリア政府に対し、経済制裁を課すことを提案した。アラブ連盟はかねてから弾圧停止や監視団の受け入れを求めていたが、受諾期限である25日までにシリア政府からの回答が得られなかった。
シリアに対する経済制裁の中には、政府の在外資産凍結やシリア中央銀行との取引停止、民間航空機のシリア便運行停止、政府高官の渡航禁止などが含まれるという。一方、生活必需品や国外からの市民の送金は制裁の対象外となる。
アラブ連盟は翌日、外相会議を行いシリア制裁案を採択。加盟する22カ国・機構のうち19カ国が賛成し、直ちに発効された。
シリアと、その大統領バシャル・アル・アサドに対してアラブ連盟がこうした行動に出るのは初めてではない。今月中旬、同連盟はシリアの加盟資格を停止したばかりだ。
犠牲者は3500人を突破
8カ月に及ぶこれまでの反政府デモで、政府側の弾圧により犠牲となった市民の数は3500人以上に達し、そのうち子供の犠牲は250人以上とされる。拘束された人々への拷問も横行し、中には女性や子供も含まれているという。国連の調査団はシリア政府の行為を「人道に対する罪」と断定する報告書を公表。国際的な圧力は日増しに高まっている。
だが、政府側が国際社会の非難を受け入れる様子はない。26日、シリア政府は「外国が関与したテロ行為」で犠牲になった精鋭のパイロット6人を含む22人のシリア軍兵士の遺体を埋葬したと発表。彼らの死に象徴されるように、抗議行動を先導しているのは改革を求める国民ではなくテロリストたちだ――。政府側は従来どおりの主張を繰り返している。
その一方で、同じ日に少なくとも13人の市民が、政府軍によって殺害されたのも事実だ。