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武器密輸「死の商人」が握るロシアの秘密
「ロード・オブ・ウォー」 米映画のモデルにもなったとされるボウト(8月20日、バンコク) Sukree Sukplang-Reuters
ロシアの武器商人ビクトル・ボウト(43)は一体、ロシア政府のどんな秘密を握っているというのか。ボウトは08年、タイのバンコクでコロンビア革命軍(FARC)と取引しようとしたところを米麻薬取締局に摘発された。以来、ロシア政府はタイ政府がボウトの身柄をアメリカに引き渡すのをことごとく妨害してきた。
ロシアが必死になるのは、この男がロシア政府による武器供給の歴史を知り過ぎているから。ボウトは80年代、モザンビークで当時KGB(旧ソ連国家保安委員会)高官だったイーゴリ・セチン現副首相の下で働いていた。ソ連崩壊後は、20年にわたって中東やアフリカの名だたる過激派組織にロシア製の武器を売り続けた。それも、旧ソ連の輸送機を使ってだ。
FARCとの取引に関しては、アメリカの同盟国であるコロンビア政府に一撃を加えてやろうと考えるロシア政府の支援もあったとされる。昨年バンコクでボウト絡みで押収された貨物輸送機が登録されていたモスクワの住所が、KGBの後身、ロシア連邦保安局(FSB)の関連企業の登録住所と同じだったことも判明している。
ボウトの送還については、10月中に判決が下される。ロシア政府に残された時間もあとわずかだ。
[2010年9月15日号掲載]