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ロシア山火事に無関心でもモスクワ市長は安泰
ロシアでは7月、破滅的な数の山火事が発生し多くの村が被害を受け、モスクワも濃いスモッグで覆われた。各自治体の消防署の無能さと腐敗ぶりに非難の声が上がっているが、なかでもその矛先が向けられているのはモスクワのユーリ・ルシコフ市長。火災発生から10日後に公式の場に姿を現したルシコフはスポーツで負ったけがの治療中だったと釈明した。
86年のチェルノブイリ原発事故以来となる、モスクワ最大の環境危機に無関心な様子を見せたルシコフだが、失態はこれが初めてではない。第二次大戦の戦勝記念日に堂々とスターリンの写真を掲げたかと思えば、市民の別荘の解体を命じて支持率を下げ、中央政府をあきれさせたこともある。
といって失脚が近いと考えるのはまだ早い。まず、ロシアの選挙を実質的に支配するのは当局であってモスクワ市民ではない。
もっと重要なのは、市長に選ばれてからの18年間で、ルシコフが支援者と権力とビジネスが絡む利益供与の大帝国を築き上げてきたこと。資金と影響力を犠牲にして、エリート層が内輪もめを起こすのを中央政府が黙って見ているはずはない。欠点の多いルシコフだが、中央政府にとっては勝手知ったる相手、なのかもしれない。
[2010年8月25日号掲載]