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軍事中国海軍増強があおる東アジア軍拡
中国に対抗してシンガポール・インドネシア・オーストラリア・ベトナムが新たな艦艇を購入、日本は36年ぶりに潜水艦を増やす方針だ
着々と戦力を強化する人民解放軍海軍(2月のパレード) Jason Lee-Reuters
東アジアはこの夏、不快な瀬戸際政策の嵐に見舞われている。中国は近年、交易ルートの確保を目指して海軍力を強化してきた。最近は近隣諸国も対抗して軍備を増強しており、中国封じ込めの動きが新たな段階に突入しつつある。
争いの主な舞台は南シナ海だ。中国、ブルネイ、マレーシア、フィリピン、ベトナムが資源の豊富な島々の領有権を主張。なかでも中国は一歩も譲らない構えだ。
7月にベトナムの首都ハノイで開かれたASEAN(東南アジア諸国連合)地域フォーラムの閣僚会議で、クリントン米国務長官は中国の艦艇による外国船の航行妨害を批判、領有権問題の平和的な解決はアメリカの「国益」だと述べ、各国首脳を喜ばせた。これに対し中国の楊(ヤン)外相は、クリントン発言を中国への「攻撃」と決め付け、この問題を多国間で協議する案に猛反発した。
折しも、日本海では米韓合同軍事演習が始まっていた。演習には、韓国哨戒艦沈没事件を受けて北朝鮮に米韓の結束を見せつける狙いがあった。だが艦艇20隻、航空機200機、兵力8000人が参加した過去最大規模の演習にいら立ったのは、中国だった。
とはいえ、気分を害したのはお互いさまだ。中国は今年になって軍事演習を強化。4月には、中国海軍の艦艇10隻(うち潜水艦2隻)が日本のごく近海を無遠慮に通過したと日本当局は主張している。
■アメリカの影響力低下の現実
この好戦的な態度に、「平和的台頭を主張する中国の真意をアジア太平洋諸国は疑わざる得ない」と、新米安全保障研究センターのエイブ・デンマークは言う。
東アジアは海軍増強競争の真っただ中にある。日本は36年ぶりに海上自衛隊の潜水艦を増やす方針を固めた。シンガポール、インドネシア、オーストラリアも新たな艦艇を購入している。中国との「友好の年」を祝っているベトナムでさえ、キロ級潜水艦をロシアから購入。中国がインド洋に侵入することを警戒するインドとの防衛協力を強化しつつある。
一方、アメリカはアジアの安定を保つ役割と「自国の影響力低下という現実」の折り合いをつける必要があると、アジア協会のチャールズ・アームストロングは言う。中国の周辺諸国も米軍の限界に気付き、遅まきながら「自己主張」を始めたということだろう。
[2010年8月11日号掲載]