中国毒食品の深すぎる闇
毒入り咳止め薬で中国不信が爆発
中国製品をめぐる最近のスキャンダルの根元には、こうしたニセ酒造りの広がりが象徴する倫理感の欠如や食品安全に関する知識と意識の低さがある。今年に入って相次いで発覚した中毒事件によって、中国製品に対する世界の不信は臨界点に達した。
危険な中国製品に対する怒りの引き金となったのは、今年3月に起きたペットフードによる中毒事件だ。アメリカでは少なくとも16匹の犬と猫が死亡。米ニューヨーク・タイムズ紙が5月上旬、有毒物質ジエチレングリコールが入った咳止めシロップを飲んだ100人以上がパナマで死亡したことを報じると、中国製品に対する疑念は一気に高まった。
6月1日、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、中国製の練り歯磨きを使わず捨てるよう警告した。中南米諸国やオーストラリアでもジエチレングリコールが入った練り歯磨きが見つかった。
先週には欧州委員会が、危険な有機化合物メラミンが入った中国産の飼料がポーランドとギリシャで見つかったと発表。シンガポール当局は、中国産の練り歯磨き3銘柄の回収を命じた。
中国製品が物議をかもすのは今に始まったことではない。02年以降、日本では「御芝堂減肥こう嚢」や「やせチャイナ」などの中国製やせ薬を飲んで約800人が肝機能障害を起こし、このうち少なくとも4人が死亡した。韓国では05年、中国産のキムチから寄生虫の卵が検出され、大騒ぎに。中国の農場で肥料として使われている人糞が原因と報じられた。
今年3月、米人形メーカーのアメリカンガールは、鉛汚染のおそれがあるとして18万個の中国製の子供用アクセサリーを回収した。
アメリカでは中国製品が政治問題に発展。ヘンリー・ポールソン財務長官は、5月下旬にワシントンで開かれた米中戦略経済対話でこの問題を取り上げた。連邦議会の議員たちは中国製品の検査強化を求めている。フード&ウオーター・ウオッチなどワシントンに拠点を置く消費者団体は、検査体制が整うまですべての中国産食品とペットフードの輸入を停止すべきだと主張する。
報復に外国産食品をつき返した中国
批判を浴びた中国は、反撃を開始した。数週間前、オーストラリア産の冷凍食品30トンが重金属に汚染されているとして輸入を拒否。またフランス産ミネラルウオーターのエビアンに「微生物が多すぎる」として、コンテナ5個分をつき返した。中国政府は各国メディアにも矛先を向け、「いたずらに危機感をあおっている」と非難。
輸出入食品の安全性を監督する国家質量監督検験検疫総局(質検総局)の李元平(リー・ユアンピン)輸出入安全局長は、中国からアメリカに輸出された食品の99%が安全基準を満たしているという中国側の統計を示し、こう反論した。「一企業の問題が中国全体の問題とはならない。安全基準に満たない食品がいくつかあるからといって、中国産の食品すべてが危険だとはいえない」
もちろん、すべての中国製品が危険なわけではない。アメリカや韓国で生産された食品や医薬品にも、禁止成分が混入されていることがある。FDAは5月30日、アメリカで生産された飼料からメラミンが検出されたと発表した。
貿易業者や専門家によれば、多くの中国製品は国際基準に達しており、食品の安全性は向上しているという。外資との合弁で、生産から販売まで厳しい品質管理基準を設けている中国企業もある。
大阪の加工食品会社ノースイは、「中国に社員を駐在させて随時管理を行っている」という。「日本からも頻繁に視察に出かけ、現地の管理者などを集めて勉強会を開催したり、現地で働く人の教育も徹底している」