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軍事ミニ衛星で宇宙戦争が変わる
作戦遂行に不可欠なのに撃ち落とされやすい軍事衛星。その弱点を克服する「プラグ&プレイ」技術とは
アメリカと同盟国の軍事作戦の成功には、軍事衛星が欠かせない。だが、衛星は極めて攻撃に弱い技術で、ミサイルなどで簡単に吹き飛ばされてしまう。中国は2007年1月、衛星の破壊実験をやってみせた。その技術はおそらくロシアにもある。
イランやインドなど衛星打ち上げ技術を持つ他の6カ国も、理論上は敵の衛星を破壊できる。ビル・クリントン米政権で国防副次官補を務めたフィリップ・コイルによれば「衛星は格好の標的」だ。
衛星を攻撃から守るのは容易ではない。研究者はその代わり、破壊されても影響が少なくて済むように、すぐに交換できる衛星の開発に取り組んでいる。
現在の衛星は大きさと重さが小型トラックに匹敵することもあり、製造から打ち上げまでに数年の期間と100億ドルを超える費用が掛かる。そこで米国防総省が開発しているのが、大型の食器洗い機程度の大きさの低価格衛星だ。
設計した軍需大手ロッキード・マーチンの広報担当者によると、このミニ衛星は既製の部品を使い、「必要に応じて」数日から数時間で組み立てられるという。イスラエルのミサイル防衛システムの元責任者ウジ・ルービンは、宇宙戦争の「ルールが様変わりした」と言う。
戦闘機での打ち上げも
バラク・オバマ政権はこの技術開発を優先課題の1つとしている。ニューメキシコ州カークランド空軍基地にある開発部隊の予算は今年、前年の1億ドルから1億9000万ドルへ増えた。中国とイラン、北朝鮮で宇宙技術の進歩が著しく脅威が高まっているからだ。
米空軍の宇宙即応展開(ORS)事務室のピーター・ウェグナー室長は、開発目標は衛星で「プラグ・アンド・プレイ」を実現することにある、と言う。「プラグ・アンド・プレイ」な衛星とは、部品を所定の場所に差し込むだけですぐに完成する衛星のこと。ウェグナーの研究チームは最近、ミニ衛星を4時間以内に組み立てることに成功した。
短時間で完成させたら、次は迅速に軌道に乗せる必要がある。アメリカの衛星サービス会社オービタル・サイエンシズは、今はミニ衛星を大型航空機から打ち上げているが、すぐにジェット戦闘機からの打ち上げが可能になるかもしれない。
ミニ衛星が、軍事衛星が抱えるすべての問題を解決できるわけではない。衛星通信の周波数は不足しており、特にイラクやイラン、アフガニスタン、パキスタンではそれが甚だしい。ミニ衛星関連の予算を審査している米政府監査院(GAO)の国防担当ダビ・ダゴスティーノは「そこが問題なのは誰もが認識している」と言う。
アメリカの軍事衛星が送信するデータの80%が経由する民間商用衛星は、妨害や侵入に弱い。現代の戦争では、地上部隊や戦闘機を配備する上で軍事衛星が欠かせない。機動力に優れた衛星の開発がなければ、作戦の成功もおぼつかないのだ。
[2009年11月11日号掲載]