最新記事

インタビュー

「イランに二者択一を突き付けるべきだ」

Q&A 英労働党のホープ、ミリバンド外相に聞く
イランへの最後通告とアフガニスタン戦略の今後

2009年11月6日(金)14時55分
ラリー・ウェーマス

イランは自ら不運を招いていると言う英ミリバンド外相
©Yiorgos Karahalis-Reuters

デービッド・ミリバンド英外相は労働党の若きホープで、将来の党首の呼び声も高い。パンアメリカン航空機爆破事件で服役していたリビア人の釈放、アフガニスタン戦略、中東和平、そしてイランの核問題について、本誌ラリー・ウェーマスが話を聞いた。


----88年のパンナム機爆破事件の実行犯とされるアブデル・バセト・アリ・アルメグラヒの釈放には納得できないが。

 釈放はスコットランドの司法当局がスコットランドの法律に従って決めたことだ。

----あなたは反対したのか。
 われわれが干渉すべき問題ではない。反対はしていない。

----釈放しないという米政府との取り決めになぜ背いた?

 われわれはどんな「取り決め」にも背いていない。あのテロに対する人々の怒りはもっともな感情であり、英米両国で共有されている。一方で、スコットランドの司法当局が独立した権限を持つことは(人々の感情とは)切り離して考えなければならない。

----アフガニスタン駐留米軍のスタンリー・マクリスタル司令官が8月末に提出した戦況に関する評価報告書をどう思うか。

 状況の深刻さを訴えており、われわれも同感だ。安全保障・経済・政治の包括的なアプローチが必要だという主張にも同意できる。

 マクリスタルは、アフガニスタン政府に治安確立と政治的な和解の主導権を取らせるべきだと言っているが、その点も同感だ。国際社会だけでなく、国民の信頼を確保するためにも、アフガニスタン政府が腐敗を一掃し、公正な統治を行うことが不可欠だ。

----アフガニスタン駐留部隊を減らすことを考えているか。

 いや、考えていない。わが国の安全保障のために駐留は必要だ。

----オバマ政権は国民に説明していないが、駐留米軍が目指しているのはアフガニスタンの改革ではなく、パキスタン国境の管理ではないか。

 国境線は2600キロに及ぶ。アフガニスタン政府がまともに国境警備を行えるようにする必要がある。2600キロも高電圧フェンスを張り巡らすわけにはいかない。

----中東和平のビジョンは?

 われわれが「23カ国の解決」と呼んでいるビジョンがある。つまり、パレスチナを含む22カ国のアラブ諸国とイスラエルの和平だ。

 パレスチナ国家の領土は、多少の領土交換はあっても、原則的に67年(の第3次中東戦争以前)の状態にほぼ戻す。難民問題の公正な解決も図る。エルサレムはイスラエル、パレスチナの2つの国家の首都とする。その代わり、イスラエルは晴れてアラブ世界から承認される。

----穏健派アラブ諸国の真の懸念はイランの核ではないか。

 アラブ世界の最大の希望はパレスチナ国家で、最大の恐怖はイランだ。だがイラン問題も中東和平の一環と位置付けるべきだ。

----イランの核をどうするか。

 いま科している制裁を続け、外交的な働き掛けで核計画を中止させる。イランには2つの選択肢しかないことをはっきり伝える必要がある。国際的なルールに従うか、国際社会の非難と制裁強化を覚悟するかだ。イランは自国を犠牲者に仕立てたがるが、実は自ら不運を招いている。

----対イランでは英仏はアメリカと足並みをそろえているか。

 英仏の立場はこの問題では完全に一致している。10月1日に国連安保理常任理事国などと行う協議で、イランは国連と国際原子力機関(IAEA)に対する義務不履行を正すための具体的なステップを明らかにしければならない。

----イランの現体制にはほころびは見えるか。

 大統領選前の国民的な議論と選挙後の人権を叫ぶ声が、イランの真の姿を浮き彫りにした。この国には、進歩的な考えを持つ教養ある人々が何百万といる。彼らは国際社会の一員にふさわしいイスラム共和国の建設という、まっとうなビジョンを持っている。

[2009年10月 7日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 5

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中