最新記事

イギリス

英国式の最新ガーデニング・トレンドは、「ガーデニングしないこと」

2019年08月27日(火)17時10分
松丸さとみ

「自然のまま」にするには、放置すればいいわけではない...... david010167 -iStock

<イギリスのガーデニングでは、殺虫剤を使用せず、手入れをやめ、できるだけ手を入れずに、自然のままの庭を楽しむことが流行っている......>

「野生に戻す」がコンセプト

英国人はガーデニング好きと言われている。テレビにはガーデニングの番組も多くあり、週末になると自慢の庭でせっせと芝を整え、バラなど季節の花を手入れしている人も少なくないようだ。ある調査によると、英国人のガーデニング愛好家の40%は、自宅の庭を美しく保つ理由を、「プライドがあるから」と回答している。

ところが最近は、そうした手入れをやめ、野性味あふれるワイルドな庭にすることが流行っているらしい。その名も「Ungardening(ガーデニングされたものを戻す)」または「Rewiling(リワイルディング)」と呼ばれている。つまり「野生に戻す」がコンセプトだ。

リワイルディングの基本的な考え方は、殺虫剤を使用せず、木や芝生にもできるだけ手を入れずに、自然のままの庭を楽しむことだ。ただ「自然のまま」といっても、庭に生えている緑や花をそのまま生え放題に放置すればいいというわけではないという。

環境保護活動家のジェニー・スティール氏は英ガーディアン紙に対し、「(一部のリワイルディング実践者の中にある)庭を放置すれば野生に戻るという考え方は、単なる神話」だと話す。ただ放置してしまえば、雑草が生え放題になってしまうだけなので、きちんとした管理は必要だと説明する。繁殖力の強い雑草だらけの庭にするのが目標ではなく、多様性豊かで自然の生き物がたくさん庭に来てくれるような、そんな庭を目指すのがリワイルディングのようだ。

環境保護に関するニュースなどを発信するウェブメディアTreehuggerは、「リワイルディングに向けた8ステップ」と題する記事の中で、自分が住んでいる地域にもともと生えている植物が何かを調べるよう提言する。そうした植物は、その土地や気候に最適なのでもっとも手がかからない上に、地元の野生生物とも相性がいいはずだと説明している。

殺虫剤を使わず環境にやさしいもので代用

前述のスティール氏は、野生の動物が自宅の庭に遊びに来てくれるような庭づくりである「ワイルドライフ・ガーデニング」の専門家でもある。同氏はガーディアンに対し、殺虫剤を使わない庭づくりのアドバイスもする。

「バラにアブラムシが付くのが気になるなら、アオガラが来てくれるようにバラの隣に鳥用の餌箱を置くといい」。そうすれば、アオガラがアブラムシも食べてくれるというわけだ(ただしアオガラは欧州に分布する鳥で日本にはいないようだ)。また、ナメクジにも駆除剤を使うのではなく、「ビール・トラップ」を作ることをスティール氏は勧める。何かの容器にビールを注ぎ地面に置いておくと、ナメクジがそこに入るという仕掛けだ。

リワイルディングは英国だけでなく、欧州の他の地域や米国でも注目されている。科学系のニュースサイトphys.orgも、米国における最近のリワイルディングの流行を取り上げており、1993年に発売されたサラ・スタイン著『Noah's Garden』(ノアの庭園)という本が、リワイルディングを実践する人たちの「バイブル」となっていると伝えている。つまり25年以上前から提唱されてきたガーデニング法のようだ。

日本では流行の兆しはまだないようだが、英国でアブラムシの駆除にアオガラが活用されているように、日本でも天敵の昆虫を使うなど、殺虫剤を使わないガーデニング方法は実践されているようだ。庭の手入れに疲れてしまった人や地球にやさしい庭を作りたい人は、リワイルディングを取り入れてみてはいかがだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米制裁は「たわ言」、ロシアの大物実業家が批判

ワールド

ロシアの石油・ガス歳入、5月は3分の1減少へ=ロイ

ビジネス

中国碧桂園、清算審理が延期 香港裁判所で来月11日

ワールド

米声優、AI企業を提訴 声を無断使用か
今、あなたにオススメ

RANKING

  • 1

    むしろ足止め歓迎! 世界の風変わり空港9選

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    104歳にして狩猟免許を初取得したスーパーおばあちゃ…

  • 4

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 1

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 2

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 3

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 4

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 5

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    【ヨルダン王室】世界がうっとり、ラジワ皇太子妃の…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:インドのヒント

特集:インドのヒント

2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり