銃乱射犯に負け犬の若い男が多い理由
Why are Shooters Invaliably Young Men?
メディアが、銃乱射犯のことをはみ出し者として描き出すのも無理はない。彼らは往々にしてそういう人間なのだ
殺人の85%以上は男性によるものだ。さらにいえば、同性間で発生した殺人の91%、加害者と被害者が見ず知らずの同性間殺人の97%が、男性によるものだ。
驚くべき数字だが、銃乱射事件といえば犯人は男性、というのもまた実感だ(ただし、昨年12月にカリフォルニア州サンバーナディーノの福祉施設で発生した銃撃事件は、夫婦2人が銃撃犯という異例のケースだった)。
銃乱射事件が起きると、政治家とメディアは判で押したように精神疾患対策の不備や銃規制の必要性といったお決まりの問題を引き合いに出して悲劇を読み解こうとする。
しかし、こうした解釈はある重要な疑問を覆い隠してしまう。つまり、銃乱射事件を起こすのがいつも男性なのはなぜか、犯人が必ずといっていいほど若い男性なのはなぜなのか、という疑問だ。
その答えのヒントは、進化心理学にある。
不安定な男らしさ
心理学者のジョセフ・バンデロとジェニファー・ボッソンは、「precarious manhood(不安定な男らしさ)」という用語を生み出し、男性のみが直面すると思われるジレンマを説明しようとした。
簡単に言えば、「男らしい」というステータスは、絶えず獲得し続けなければならないものだ、というのだ。そして男性の自尊心は、「本物の男」としてみなされることと結びついている。
不安定なのは、その地位がいともたやすく失われてしまうからだ。身体的な勇敢さを試されたり、ほかの男性と人望や地位を争うときなど、状況はさまざまだ。
筆者がそうした考え方を男子学生に紹介すると、すぐさま私の言わんとしていることを理解する。だが女性は、困惑した表情を浮かべることが多い。話をすれば、「男らしさ」は「女らしさ」よりも不安定であることは明らかだ。
男らしさははかないものだが、それを獲得し続けなければ自尊心を保てない──男性が直面するこのジレンマは、歴史をはるかに遡った有史以前から存在していた。
動物の世界では、メスにとって最も魅力のないオス同士が、繁殖相手を求めて争う。序列の高いオスは、常により多くのメスと繁殖機会を得るが、その地位をめぐる生存競争は熾烈を極める。
南米アマゾンのヤノマミ族の研究を長年にわたって行なってきた人類学者のナポレオン・シャグノンは、ほかの男性を殺した男性のほうが、誰も殺さなかった男性よりもはるかに多くの妻を得ていることを発見した。しかも、集団における男性の地位はたいてい、その人の肉体的な強さにどれだけ真実味があるかで決まっているようだ。