最新記事

知る権利

秘密主義化する米政府

不都合な文書は読ませない? 連邦機関が情報公開法などの法律を踏みにじり、理屈をつけて公開請求を拒むケースが増加中

2013年12月5日(木)14時45分
デービッド・ケイ・ジョンストン

透明な政府を約束したオバマだが(右はホルダー司法長官) Kevin Lamarque-Reuters

 民主主義を守りたいすべての人にとって憂慮すべき事態だ。オバマ大統領は政府の透明性を確保すると約束しているが、政府の情報公開のハードルはむしろ高くなる一方だ。

 連邦政府機関が情報公開法や政府公開法などの法律を踏みにじり、ジャーナリストの情報公開請求や手数料免除申請を拒否するケースが増えていると、情報公開の専門家たちは言う(法律の規定により、作家やジャーナリストは、資料請求に対する文書検索手数料を免除されることになっている)。

 最近、元ロサンゼルス・タイムズ紙記者のデニス・マクドゥーガルの情報公開請求に対して司法省が手数料免除を拒否したのは、その典型だ。

 マクドゥーガルは麻薬取締局(DEA)に、エンターテインメント業界関係者だったデービッド・ウィーラー(故人)に関する記録の公開を求めた。ウィーラーはDEAサンディエゴ支局に出入りしていたことが知られている。商売敵に関する情報を捜査官に提供し、それと引き換えに自分の違法ビジネスを黙認されていたと、マクドゥーガルらは考えている。

 マクドゥーガルが請求した資料は、「(政府の活動についての)国民の理解に大きく資する可能性が高い」という法律の基準に適合するように見えるが、司法省の不服申し立て審査責任者であるショーン・オニールは手数料の免除を拒否した。17点の文書の検索手数料として1900ドルを納めるよう求めた。しかも、手数料を納めても文書が公開される保証はない。

不可解極まる拒絶理由

 このときオニールは、問題の文書がどういう点で政府の活動に「光を当てる」のかが不明確だと断言。また、マクドゥーガルがジャーナリストとして著作を発表する可能性も立証されていないと述べた。資料は歌手ボブ・ディランの評伝を書くためのもので、大手出版社ターナー・パブリッシングと出版契約も結んでいるのだが。

 オニールは「貴殿は自らの商業的利益のために情報を求めているように見える」と述べている(取材要請にオニールは返答していない)。

 情報公開専門の弁護士であるブラッドリー・モスによれば、こうした扱いは珍しくないという。「連邦政府機関は、情報公開請求を恣意的に審査し、手数料の免除や文書公開を拒んでいると言っていい」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

フーシ派、日本郵船運航船の乗員解放 拿捕から1年2

ワールド

米との関係懸念せず、トランプ政権下でも交流継続=南

ワールド

JPモルガンCEO、マスク氏を支持 「われわれのア

ワールド

サウジ王子の投資会社、TikTok出資も マスク氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 4
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 5
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    【クイズ】長すぎる英単語「Antidisestablishmentari…
  • 8
    トランプ就任で「USスチール買収」はどう動くか...「…
  • 9
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 10
    「後継者誕生?」バロン・トランプ氏、父の就任式で…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中