最底辺「地下アイドル」が見た厳しい現実 松山あおいが下剋上を成功させた秘訣とは
今、大注目のアイドル松山あおいさん、29歳。彼女のアイドル人生を読み解くと「大事なもの」が見えてきた(写真:松山あおいさん提供)
メジャーな事務所にいるわけでもなければ、大きなグループに在籍したこともない、完全な「セルフプロデュースアイドル」。地下から這い上がり、大下剋上を成し遂げた正真正銘の「泥臭いシンデレラガール」なのである。
どうやってそんな「大逆転」を成し遂げたのか。デビューから9年、彼女の軌跡を追うことで見えてきたのは「自ら作り、継続すること」の重要性だった。
スカウトから始まったアイドル人生
松山あおい、29歳、職業「クリエイティブうたのおねえさん」。言うなれば「地下アイドル」だ。
松山曰く「肩書はアイドルでもシンガーでもなんでもいいです。私はみんなを歌で楽しませるのが一番なので」と割り切っている。
幼いころからアニソンが大好きで、当然のように「アニソンシンガー」を目指すことになる。高校在学中から数多くのオーディションを受けてきたが、思うように結果が出なかった。
高校卒業後も、「つい最近までしていた」というゲームセンターのアルバイトをしながら、オーディションに挑み続けたが、ダメだった。
焦りと苛立ちが募る中で偶然、街角でスカウトに声をかけられたのが、良くも悪くも松山あおいのアイドル人生のスタートとなったのである。
「夢にまで見たアニソンシンガーになれる!」そんな思いは一瞬のうちに砕け散った。
松山が最初に立ったステージは、「アニソンシンガー」とは名ばかり、カバー曲をイベントスペースで歌う、まさに「地下アイドル」でも底辺のステージだった。
「それまでアイドルのライブはまったく見たことがなかったんです。初めてのライブが秋葉原の小さなイベントスペースだったんですけど、出演者のほうがお客さんよりも多くて、まずそれに驚きました」
「地下アイドル」のライブシーンでは、往々にしてこのような「出演者のほうがお客さんより多い」現場に遭遇する。
「厳しい現実」と言ってしまえばそれまでだが、やはりステージに立つ側は、やりきれなさはあるだろう。
「ライブが始まったら『タイガー!ファイヤー!......』ってお客さんが叫んでいて、それにもほんとびっくりして。そのときのことはよく覚えています」
「タイガー!ファイヤー!......」とは、「MIX(ミックス)」と呼ばれる独特な掛け声だ。スタンダードなものから、独自のものまで、現場により数多の「MIX」が存在し、ファンは昂った「推し」への気持ちを「MIXを打つ」と表現する。