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カルチャーこの男がいなければ... 知られざる「聖火台」成功の立役者、武井祥平らがPenクリエイター・アワードを受賞
Photos:Hiroshi Iwasaki(左); 齋藤誠一(右)
<このエンジニアがいなければ、東京五輪のあの聖火台は成功しなかった――。これまでほとんど光が当たることのなかった人物、武井祥平とはいったい何者なのか>
開催の是非を含め、さまざまな激論の中で行われた東京オリンピック・パラリンピックが終わって2カ月半がたつ。
オリンピックの開会式で、大坂なおみ選手が登場したことには、多くの人が驚いただろう。大トリとも言える場面。聖火のトーチを手に、大坂は「富士山」を表現したステージの階段を上り点灯を行ったが、あの「太陽」のような球体の聖火台を覚えているだろうか。
聖火台をデザインしたのは、日本を代表するデザインチーム、nendoだ。上下2段、計10枚の外装パネルが花びらのように開き、中心に火が灯るという「動き」がポイントだった。
しかし聖火台は、実はある人物なしには完成しなかったという。これまでほとんど光の当たることのなった、その陰の立役者は、聖火台の機構設計を担当したエンジニアの武井祥平。
聖火台のスムーズな動きを実現したのは、超高精度のアルミ材加工を担ったトヨタ自動車を中心とする企業の技術力と、武井によるエンジニアリングの技術だったのである。
そんな武井祥平が、このたび発表された「Penクリエイター・アワード2021」を受賞した。
合計で数百キログラムになるパネルの重量やモーターの性能など、さまざまな制約があるなか、武井は複雑で滑らかな聖火台の動きを実現。さらに天候に左右される屋外で、確実に火を灯した。
多くの検証と改善を重ね、聖火台をつくり上げた技術力が、アワード受賞の理由だという。
聖火台以外にも、nendoをはじめさまざまなデザイナー、アーティストの作品を実現させる機構を手がけてきた武井。
11月27日発売のPen誌2022年1月号「クリエイター・アワード」特集では、そんな彼のクリエイションの原点から聖火台の制作秘話までが語られている。
武井の言葉。
「回転軸を組み合わせて聖火台のそれぞれのパネルを動かすわけですが、内部に入れる機構が多ければ多いほど動きが複雑になります。しかし実際には、メカを入れられるスペースはとても限られている。球体が開き、それがまた閉じて球体となるためには、あらゆる要素の検証が必要でした」
(Pen誌2022年1月号より)
「よりよい未来のために」をテーマに、外部から審査員を招き、厳選な選考を行ったという「Penクリエイター・アワード2021」では、武井のほかに、ファッションデザイナーの黒河真衣子、現代アートチームの目[mé]、クリエイティブ・ラボのanno lab、美学者の伊藤亜紗、福祉実験ユニットのヘラルボニー、デザイナーのwe+の計7組が受賞者となった。
これからの時代をつくる、そんな可能性に満ちあふれたクリエイターたちの名が連なっている。