VW:車のソフト依存が不正の温床に
州の排ガス基準をクリアできなければ、州内での登録は認められない。カリフォルニア州のような環境規制の厳しい州では今後、リコール対象となったVW車の登録更新が難しくなるかもしれない。
未来の車は、いわば「車輪付きのコンピューター」だ。米アップルまでもが独自の車の開発に乗り出すなか、既存の自動車メーカーは競って車のコンピューター化を進めている。
各社が開発にしのぎを削る「自動運転車」では、運転手もソフトウエアに取って代わられることになる。ただし、ソフトウエアには常にバグやハッキング被害、クラッシュの危険が付きまとう。ソフトウエアがクラッシュすれば、車もクラッシュ(衝突)する。
その点、米テスラモーターズの電気自動車は未来を先取りしている。同社の車はネットに常時接続されており、スマートフォンのアプリと同様に定期的にソフトが自動更新される。瓦礫を踏んだ際に車のバッテリーパックにへこみができたという報告を受けて、ソフトウエアをアップデートし、サスペンションを路面から離すよう設定が変更されたケースもある。
VWも、同様の方法でソフトウエアに修正を加えることは可能かもしれない。それどころか、自動車ローンの返済が滞っている車を動けなくすることも技術的には可能だ。
ハッカーが遠隔操作によって高速道路を走行中の車のエンジンを停止させるというシナリオは、既に現実のものとなっている。車載ソフトをアップデートすべき重要な理由の1つは、そうしたセキュリティー上の脆弱性に対処することだ。
著作権法が意外な壁に
だが、セキュリティー専門家の行く手を阻む壁がある。意外や意外、著作権法である。
アメリカで00年に施行された「デジタルミレニアム著作権法(DMCA)」には、デジタルメディアのコピーを防ぐ管理ソフトの無効化を禁じる条項がある。だが、もともと映画DVDや音楽CDの海賊版の製作・配布を防ぐために設けられたこの条項が想定外の目的のために利用され、セキュリティー専門家の足を引っ張っている。ハイテク家電などのメーカー各社が、自社製品に搭載したソフトウエアは著作権で保護されていると主張し、専門家からの外部チェックを妨害しているのだ。
実際には、専門家によるソフトウエアのチェックは全米すべての州で合法とされている。それでもメーカー各社は、DMCAを盾に管理ソフトへの外部からのアクセスを拒み、人々が日々使う機器の脆弱性が露呈しないようにしている。