最新記事

日本経済

日銀緩和前提で財政再建は先送りか

政府が新たに示す財政健全化計画に、市場からは歳出膨張に対する歯止めが「緩い」との見方が

2015年6月26日(金)10時25分

6月26日、政府が新たに示す財政健全化計画に対し、市場関係者の多くは、歳出膨張に対する歯止めが「緩い」との見方を示している。日銀本店、24日撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 26日 ロイター] - 政府が新たに示す財政健全化計画に対し、市場関係者の多くは、歳出膨張に対する歯止めが「緩い」との見方を示している。

一方、政府部内には、財政再建の前提として長期金利の低位安定があるとし、日銀の量的・質的金融緩和(QQE)継続に期待を寄せる。

日銀の出口政策に関する決断次第では市場の大きな変動も予想され、日銀の政策判断に対する市場の注目度は一段と高まりそうだ。

歳出膨張の歯止め、与党内からも「穴だらけ」の声

政府が22日の経済財政諮問会議に示した経済財政運営の指針となる「骨太の方針」の素案では、財政健全化目標として2020年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化を明記しつつも、成長重視による税収増を財政再建の柱とし、明確な歳出削減目標を示さなかった。

その一方、2018年度までの3年間に一般歳出の増加を1.6兆円に抑制する目安を盛り込むことを決めた。

ただ、与党内には3年間での目安となったことで、16年度予算編成を直接的に制約しないとの「解釈」が早速出ており、「穴だらけに見える」との声もある。

財政再建の前提、低い長期金利

財務省によると、仮に2016年度以降に長期金利が想定よりも2%上昇した場合、国債費は同年度に2兆円、17年度に4.8兆円、18年度に8兆円も増加。消費増税3%分が吹き飛ぶ計算だ。

日銀によると金利が全年限にわたって1%上昇した場合、金融機関の保有国債に7.5兆円の含み損が発生する。

政府部内では、2020年度のPB黒字化を実現するには、長期金利の低位安定が不可欠の条件であり、日銀の量的・質的金融緩和の継続が暗黙の前提になっているとの声が漏れる。

市場に根強い「遠い出口」論

一方、日銀は2%の物価目標達成に全力を尽くし、安定的に推移するまでQQEを継続すると何回も明言してきた。言い換えれば、安定的に2%の物価で推移していると判断すれば、現行のQQEを停止ないしは修正することになる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中