原油価格決定のカギはあの国が握る
生産調整が簡単なシェールオイルの力で、アメリカがサウジに代わる新たなプレーヤーに
驚きの柔軟性 アメリカのシェールオイル業界は原油安を受けて掘削規模を縮小 Lucy Nicholson-Reuters
石油会社と産油国は先週、かすかな希望の光を目にした。
1月に約6年ぶりの安値を付けた原油価格は、先週に入って1バレル=50ドル台まで回復。国際的な指標となるブレント原油価格は、1月中旬の安値から20%以上も値を戻した。
確かに、1バレルの価格はいまだに昨年半ばの半値水準に沈んでいる。それでも原油価格は底を打ったと判断できなくもない。
もしそうなら、エネルギー分野の重要な役割は今やアメリカのものになったと言えそうだ。
世界の原油生産量は、相変わらず需要を上回っているとみられる。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが指摘するように、アメリカの石油備蓄量はこの84年間で最大に達し、現在も増え続けているようだ。
にもかかわらず、市場には楽観ムードが漂う。原油安を受けて石油メジャーは投資の削減を発表しており、結果として生産量が減少するはずだからだ。
さらに重要なのは、アメリカで油田掘削装置の稼働数が急減している点かもしれない。米資源開発サービス企業ベーカー・ヒューズによれば、昨年10月以降、掘削機稼働数は約25%減少している。言い換えれば、アメリカの原油生産者は超安値への対応として、掘削の規模を縮小しているとみられる。
原油業界では、前代未聞の出来事だ。油田開発に巨額を投じた企業は大抵、投資資金を回収するために何年も採油を続ける。だから供給過剰に陥っても、なかなか生産量を減らせない。
サウジが犯した判断ミス
だが昨今のアメリカのエネルギーブームの中心は、シェールオイルだ。シェール用油井は短期間で産出量が低減するため、産出レベルを維持するには、新たな油井を掘り続けなければならない。原油価格が急落したら掘削をすぐに停止すれば、市場に出回る量は減る。
「アメリカのシェール産業は生産の開始と休止を、ほぼ即座に切り替えられる。原油市場にとって画期的な事態だ」と、ハーバード大学ケネディ行政大学院のエネルギー専門家、レオナルド・マウジェリは指摘している。