最新記事

イスラム教

ハラールの威力で盛況、ロシアのホテル

欧米の経済制裁で打撃を受けたロシア観光業界が、中東のイスラム教徒を呼び込むために変身中

2014年10月21日(火)16時10分
マリア・カーン

祈りの文化 10月初旬、犠牲祭の礼拝を行うイスラム教徒(モスクワ) Sergei Karpukhin-Reuters

 イスラム教の礼拝室を用意したり、コーランを客室に置いたり。モスクワのアエロスターホテルはイスラム教徒(ムスリム)の宿泊客を呼び込むために、特別なハラール・サービスを開始した。「ハラール」とはイスラム教の教義にのっとった商品やサービスのこと。アエロスターホテルが、ロシア内のイスラム教指導者から「ハラール」と認証されるには大規模な改装が必要だった。

「利用客の約70%が外国人で、その13%の約5000人がイスラム教国からの観光客やビジネス客だ。特にイランが多い」と、アエロスターホテルのマーケティング部長であるリュボフ・シヤンは言う。「ムスリムのお客様に、礼拝室や特別な料理を頼まれることが頻繁にあった」

 今年2月にウクライナ問題が起こって西側の経済制裁を受けてから、ロシアの観光業界は大打撃を受けている。特に欧米からの観光客の落ち込みが大きく、アメリカとイギリスの観光客は推定30〜50%も減少しているという。

改装や準備の費用も元が取れた

 このためロシアのホテルはアジアや中東からの観光客を狙わざるを得なくなった。これらの国々は欧米と違い、ウクライナに軍事介入したロシアに経済制裁を発動したりしていない。「全308室のうち20室に礼拝用マットや体を清めるためのたらい、聖地メッカの方角を示す方位磁石を用意した。シャンプーや石鹸もハラールと認証されたもので、動物性油やアルコールは含んでいない」と、シヤンは言う。

 ハラール料理を作るためだけの独立したキッチンも設置した。ホテルのシェフ、ビタリー・ウカノフは「ここには豚肉やハムは一切ない。食器はすべて新品で、メインのキッチンで使われたものはない」と話す。

 こうした準備や改装にはそれなりの費用が掛かったが、イラン人ビジネスマンの利用増により元が取れた。ハラールのサービス開始から最初の2週間で、マレーシアやイラン宿泊予約が殺到している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中