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貿易自動車工場、メキシコへ行く
世界のほぼすべての主要メーカーがメキシコに集結している理由は?
中部グアナフアト州にあるホンダの新工場 Henry Romero-Reuters
韓国の起亜自動車が10億ドル以上を投じてメキシコに同社初の自動車生産工場を建設する──メキシコ経済にとっては極めて重大なニュースだ。同国のペニャ・ニエト大統領もこの知らせを自ら発表。自動車工場を世界から誘致する決意をあらためて強調した。
「アメリカ工場が生産能力の限界に達した起亜は、最近の自動車業界の流行に乗った。メキシコならアメリカのすぐそばで生産できるし、アメリカよりも多くの自由貿易協定を結んでいるというメリットもある」と、工場用地選定の専門家ディーン・バーバーは言う。
世界第2の自動車市場と国境を接するメキシコは、カナダ、アメリカ、メキシコが締結したNAFTA(北米自由貿易協定)が94年に発効してからは特に、自動車の生産拠点として理想的な場所になった。最近の調査では、北米を走る自動車5台のうち1台がメキシコ製だ。
韓国の大手自動車会社が進出すれば、世界のほぼすべての主要メーカーがメキシコに集結することになるだろう。
人件費の安いメキシコで製造される車は、これまでトラックやSUV、小型セダンなど、高級車に比べて利益率が低い車が主体だった。だが近年は労働者の技術が高まり信頼性が向上したため、高級車の生産も始まろうとしている。
ダイムラーと日産自動車は中部のアグアスカリエンテス市で高級車生産を始めると6月に発表した。約13億6000万ドルを投じ、共同生産用の工場を造る。17年には日産のインフィニティを、翌年からはメルセデス・ベンツの生産を開始する。ライバルのBMWも直後に10億ドル規模の新工場建設を発表。19年から年間約15万台を生産する予定だ。「メルセデスやBMWが生産するとなれば、もはやメキシコは低価格車専業国とは言われなくなる」と、バーバーは言う。
11年以降、自動車産業関連の直接投資は約100億ドルに達した。北米市場の裏庭だったばかりでなく、貿易自由化の波に乗った成果だろう。
[2014年9月 9日号掲載]