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株価暴落の余波で米年金の崩壊が始まった

確約されていたはずの100万人の退職者年金がゼロになる可能性が浮上

2014年7月3日(木)13時50分
アンジェロ・ヤング

老後の不安 年金給付の削減に抗議する人々(4月) Rebecca Cook-Reuters

 第2次大戦後に生まれたベビーブーマー世代が続々と退職し、年金生活者が増え続けているアメリカで、給付金額が保障されているはずの年金が支払われないケースがでてきている。規制緩和と01年以降の2度の株価暴落の影響で、何百万人もの人々が約束されていたはずの年金を受け取れない事態に陥るかもしれない。

 年金給付を保証する事業を行う連邦政府機関である年金保証公社(PBGC)は、運用成績の悪化などで積立金不足に陥り、立て直し不可能な年金プログラムが存在すると警告。連邦議会が数年以内に対策を講じなければ、少なくとも百万人が積み立ててきた退職者年金を受け取れなくなるとしている。

 PBGCが特に問題視するのは複数事業者型退職年金だ。これは通信や鉱業、建設業といった業界内の複数の企業と労働組合の合意に基づき、共同で運営される年金プログラムで、加入者はおよそ1000万人に上る。企業側にとってはリスクを分散し、事務費用を抑えられるメリットがあり、従業員側も業界内で転職した際に同じ年金を継続できる点が有利だった。だがそれも、加入者の10人に1人が年金をまったく受け取れない恐れがあるという。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、議会が11月の中間選挙前に対策を講じる可能性は低いと報じている。さらに、「一度約束された年金は必ず支払われる」という40年前の連邦政府の約束は、もはや守られなくなるとも指摘している。

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