最新記事

欧州経済

フランス「富裕層の狙い撃ち」が始まった

オランド新大統領は就任早々、富裕層への容赦なき締め付けに乗り出した

2012年6月4日(月)17時01分
ルーク・ブラウン

公約どおり まずは自分と閣僚の給与を30%カットしたオランド Philippe Wojazer-Reuters

 フランスで17年ぶりに政権を奪取した社会党は、公約どおり富裕層への容赦なき締め付けに乗り出したようだ。

 フランソワ・オランド新大統領率いる社会党政権は先ごろ、国営企業の幹部職員の報酬カットにただちに取り掛かると発表した。ヨーロッパ経済が危機に陥っているというのに、国営企業幹部の諸手当は手厚すぎる----背景には、こうした国民の不満がある。

 AFP通信によれば、オランド政権は報酬カットの内容を近日中に発表する予定だ。国が資本の50%以上を保有する企業については、幹部職員の給与が従業員の最低給与額の20倍を超えないようにするというのは、オランドの選挙公約でもあった。

「国有企業幹部が対象」は序の口

 英ガーディアン紙によれば、フランス政府が出資している企業は52社に上る。そのうち政府が資本の100%を保有する企業は半数程度だが、フランス電力公社など政府が資本の大半を握る企業も今回の報酬カットに従わなければならない。さらに、政府の資本が半分に満たない企業も、同様の措置を取るよう促されるだろう。

 今回の発表に先駆けて、社会党は大統領と閣僚の給与を30%カットすると決定。政府報道官のナジャット・バローベルカセムはロイター通信に対し、大統領と閣僚の給与カットに伴い国営企業幹部の報酬も削減されるのは当たり前だと語った。

「報酬の削減は、現時点で既に取り交わされている契約にも適応される。既存の契約が切れるまで待つというのは、危機的状況下ですぐにでも行動を起こさなければならない時に、道端で缶けりをして遊んでいるようなものだ」

 今回の報酬カットは、ほんの序の口かもしれない。オランドは大統領選の選挙戦で、財政再建策として富裕層に対する課税の強化を掲げていた。現行の税制では年収7万ユーロ以上の所得層を対象とした41%が最高税率だが、オランドは年収が15万ユーロ以上の富裕層は所得税率を45%に、100万ユーロを超える層は75%にそれぞれ引き上げる方針を打ち出していた。

 大統領になって最初に取り掛かった仕事が、自分と国営企業幹部の給料を減らすこと----大統領選でオランドを支持した国民は、今回の動きを大歓迎するだろう。標的にされた富裕層は、国を捨てて逃げ出すかもしれないが。

 
From GlobalPost.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中