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中国労働者が証言!iPad2工場の実態
アップルの人気商品を委託生産する四川省成都の工場で爆発事故が発生。元凶となった劣悪な労働環境が明らかに
不安的中 5月20日に爆発事故が起きた富士康の成都工場では、以前から安全面の問題が指摘されていた Reuters
中国の台湾系電子製品メーカー「富士康」といえば昨年、広東省深センの工場で従業員の自殺が多発した渦中の企業。劣悪な労働環境が問題となり、巨大な工業都市のビジネスモデルが台無しになる可能性もささやかれる中、同社は四川省成都に新たな工場群を設立。アップルのiPad2の製造を担うこの新工場では、既に10万人近い人々が働いており、来年には50万人に達する可能性もある。
しかし労働者の権利擁護団体や同社の従業員によれば、成都工場でも以前から安全面の不備が問題視されていた。そして、その不安は見事に的中。5月20日、工場内で3人が死亡する爆発事故が発生した。
労働者らに言わせれば、工場の設立当時から安全上の課題はあったという。だが、富士康は地元自治体と連携し、好条件をアピールして労働力を集めた。新規採用者には高額の残業代が約束されたうえに、自治体から12〜200ドル相当のボーナスも受け取れるという。しかし実際は、反故にされた約束もあり、社員寮の劣悪な環境や長時間労働、睡眠不足などの問題の改善もみられない。
寝る場所も手を洗う水もない
リーという名の26歳の女性が、成都工場に就職したのは今年2月。地元自治体が採用活動を代行していたので、安全な仕事だと思ったという。しかし、バスに押し込まれて工場に到着した当日は、寝る場所さえなかった。「激しく動揺して泣き始めた人が大勢いた」と、リーは言う。
ようやく入れた寮には簡易トイレしかなく、手を洗う水もなかった。リーは富士康での仕事を辞めたいと願っている。労働時間も給与も仕事内容もひどいうえに、粉塵の問題があるからだ。
20日の爆発も、工場内の至るところに舞う粉塵が原因とされる。香港を拠点とする労働団体「SACOM(企業不正に対抗する学生・研究者)」は何週間も前から、成都工場内の粉塵について警告を発していた。
SACOMは5月中旬に富士康に提出した報告書で、成都工場の労働環境について深刻な懸念を伝えていた。「われわれが話を聞いた多くの人々が(アレルギー症状)さえ訴えているが、経営陣は従業員の健康への悪影響を精査していない」
伸び続けるアップルの需要に応えるために
SACOMは2カ月前に撮影した工場内の映像を公開した。そこには、健康被害を及ぼす可能性がある粉塵にまみれながら、iPadのアルミニウムケースの研磨作業を行う従業員が映っていた。富士康は、安全調査の結果が出るまで、中国国内のすべての工場でこうした研磨作業を行わないとしている。
粉塵問題は何カ月も前から指摘されていたので、富士康が知らなかったと主張するのは許されない。適切な対策を講じていれば事故は防げたはずだと、SACOMは指摘している。
工場労働者は当然、粉塵の存在を知っていたが、そこに潜む危険性までは意識していなかった。「工場内は空気が悪くて臭う」と、リーの同僚は言う。「従業員の9割は呼吸器系の疾患をかかえているようだ」
それでも、富士康は成都工場の計画を縮小しないようだ。世界中の大手企業に電子機器を供給し、アップルの中国製製品の大きなシェアを担う富士康は、伸び続ける需要に応じるために生産を拡大している。
富士康もアップルも、今回取材には応じなかった。両社とも爆発事故に遺憾の意は表明したが、事故に関する報道は制限されている。国営の新華社通信でさえ、事故現場からのリポートを暴力的な手段で妨害された。
成都工場の安い賃金では、リスクに見合わないと考える労働者は少なくない。「仕事を辞めると家族に伝えたが、母は続けてほしいと言った。この工場は大丈夫と考える(実家の)近所の人々が母を説得したからだ」と、リーは言う。「近所の人たちは政府から安全だと言われている」