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アメリカ経済夏休みバイトが見つからない大異変
不況のあおりで大人の失業者が夏休みの学生アルバイト市場に流入。はじき出された学生たちの将来が懸念されている
充電期間? 夏休みにごろごろして過ごすかバイトするかで、学生の将来は大きく左右される Eric Thayer-Reuters
仕事を探しているすべての人にとって、この夏は残酷だ。特にしわ寄せを受けているのが十代の若者で、「夏休みバイト市場は1948年以降で最悪」とさえ言われる。
店でモノを売ったりアイスクリームをすくったりする仕事は、何世代にもわたって多くの高校生の通過儀礼だった。ところが全米の失業率が9%を超えた今、バイトを探す学生には手ごわい競争相手がいる。学生向きの簡単な仕事に就くことさえいとわない、大人の失業者たちがライバルなのだ。
夏休みに家でごろごろして過ごすしかないということ以外に、こうした状況は高校生や大学生にどんな影響を与えるのだろうか。収入がないばかりでなく職業技能も身に付かず、「将来就職しにくくなる」と、ノースイースタン大学(ボストン)労働市場研究センターのアンドルー・サム所長は言う。同センターの調査によると、高校・大学時代に働いた経験がある者は、そうでない者より給料が平均16%高い。
やる気満々の学生やバイトの経験のある学生でも、この不景気ではバイトを見つけるのは難しい。シモンズ大学(ボストン)の2年生ケイトリン・バスコンセロス(19)は、この夏休みに帰省した。地元のマクドナルドで働いた経験があり、今回も近所のショッピングモールで簡単にバイトが見つかると思っていた。
だが彼女は、履歴書を送っては確認の電話を掛ける作業に明け暮れた。「夏の間じゅう本当に大変な思いをした」と、携帯電話で取材に応じたバスコンセロスは言う。「どの店も夏以降も働き続けられる人を探していたけれど、私は大学に戻らないといけない」
バイトで学ぶ「ソフト・スキル」とは
2カ月後、彼女はようやくサンドイッチとコーヒーの店「セシリーズ・カフェ」で仕事を見つけた。その店で数年間働いている友人のおかげだ。「両親にお金をせがみたくない。自分で責任を持ちたい。それに現金に余裕があるというのはいつだってうれしい」と彼女は言う。
夏休みのバイトは長期的には高収入を稼ぎ出す能力につながるが、もっと重要なのは「ソフト・スキル」が身に付くことだ。ソフト・スキルとは、時間を守り、社会人らしいメールを書き、チームの中で協調して働くといった能力である。
「経営者がこうしたスキルを重視していることを裏付ける資料は多い」と、ノースイースタン大学のサムは言う。「働かないとしたら、同世代の学生や自宅のパソコンを通じて社会人としての作法を学ぶしかない。それは協調性を身に付けるには最悪の方法だ」
14~24歳の青少年にソフト・スキルを習得させるため、多くの州は連邦政府の景気刺激予算をアルバイト紹介プログラムの資金に活用している。マサチューセッツ州でこうした公的プログラムを運営するベーラ・ギャラガーによると、1300人以上の応募者のうち、これまで650人が時給8ドルの仕事を見つけることができたという。
「若者に人生最初の職を紹介するのは素晴らしいこと。初めての給料をもらった子は態度に表れるので分かる」とギャラガーは言う。その使い道は「貯金する子もいるし、家計の足しにする子もいる」。
この夏、幸運にもバイトを見つけることができた十代の若者には、うまく生きるコツを少しでも覚えてほしいし、就活の仕方も学んでほしい──サムはそう願っている。