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ティーパーティーの正体
アメリカ政治を脅かす怒れる民衆
中間選挙の行方は彼らの手に
中間選挙の行方は彼らの手に
ティーパーティーの正体
保守派の論客パット・ブキャナンはかつて、「白人キリスト教徒が支配的な国から非白人が多数派の国」に変化するのは悪であり、食い止めるべきだと言った。だがアメリカの政治文化でも、個人主義のイデオロギーでも、人種的な偏見は許されない。だからティーパーティーはブキャナンのような直接的な表現はしない。
その代わり彼らは、現実をゆがめてそこに人種偏見を埋め込む。ティーパーティーの指導的存在である保守派キャスターのグレン・ベックは、オバマは「白人に対して執拗な憎悪」を抱いていると発言。政治評論家のディネシュ・デスーザと共和党のニュート・ギングリッチ元下院議長は、オバマの世界観は「ケニアの反植民地主義」に基づいたものだと語った。
共和党は取り込みに必死
歴史家のリチャード・ホフスタッターはかつて、ポピュリズム(大衆迎合主義)を動かすのは「自分たちの地位が失われるという不安」だと述べたが、それがこれほどぴったりくる運動はない。共和党はティーパーティーの台頭を、祝福と戸惑いの入り交じった感情で受け止めている。この運動の支離滅裂ぶりにのみ込まれることなく、また過激過ぎる見解に染まることなく、どうやってそのエネルギーと怒りを吸収するかを必死に考えているようだ。
民主党は60年代にこれをニューレフトに対して試みて失敗したが、共和党もてこずっている。それを一番痛感しているのは、毎週の予備選でティーパーティーと直接対決してきた共和党議員らだろう。
党幹部は、ランド・ポール(ケンタッキー州の予備選で勝利)やシャロン・アングル(ネバダ州の予備選で勝利)など、ティーパーティー推薦候補が続々と当選するのを見て、彼らの過剰な清廉ぶりに脅威を感じつつも、支持や励ましの声を掛けてきた。
この状況を見て、リベラル派は笑いをかみ殺しているかもしれない。確かに今のところ、ギングリッチやミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事ら、やり手の保守派政治家がティーパーティーを取り込もうと四苦八苦しているのを見るのは愉快だ。
だが過激な運動の例に漏れず、ティーパーティーは統率するのも手なずけるのも、追い払うのも難しいだろう。このグループの本質は自分たちの気に入らない変化に怒りをぶつけることであって、間違いを修正することではない。その怒りを政策に取り込めば、そのこと自体が既にこの運動への裏切りになるのだから。
[2010年9月29日号掲載]