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自分を創る音の風景

vol.5 音響設計家 豊田泰久さん

2014年07月25日(金)12時01分

 世界各地のコンサートホールでは音響設計家と呼ばれる<音のプロフェッショナル>が重要な役割を果たしている。特にクラシックの場合は基本的にマイクやスピーカーを使用しない分、コンサートホールの建築そのものを音響面から検討する音響設計家の存在が極めて大切になってくる。
 そんな音響設計の世界で国際的に活躍しているのが豊田泰久さんだ。これまでに数多くのコンサートホールを手がけてきた豊田さんだが、なかでも86年にオープンした東京で最初のコンサート専用ホール<サントリーホール>やアメリカの<ウォルト・ディズニー・コンサートホール>は世界的にも高い評価を得ている。そんな彼の原点を探るべく、豊田さんの<音の原風景>と音楽への情熱について話を伺った。

豊田泰久さん

──ご出身は広島県福山市ですよね?
「そうですね、高校まで福山です。僕が育った50~60年代の福山は普通の中核都市という感じでしたね」

──豊田さんにとってもっとも古い<音の記憶>とは何でしょうか。
「両親が音楽が好きで、父親は尺八を、母親は琴をやっていたんです。父はレコードも収集していて、家にあったモノラルの電蓄でクラシックのSP版を聴いていました。それが1950年代末、ちょうどSP版からLP版に変わったぐらいの時期。あるとき興味を持って一枚のレコードを聴いてみたんですけど、それがあまりにも衝撃的で。<音楽ってこんなにいいものなの?>っていう感動があったんですね」

──それは何のレコードだったんでしょうか。
「たまたま手に取ったレコードがシューベルトの"未完成交響曲"だったんですよ。それまでシンフォニーなんて聴いたことがなかったから、ものすごく感動しました。そのときのことは今でもはっきりと覚えていますよ」

──それからクラシックの世界にのめり込んでいくわけですね。
「そうですね。中学に入ってからは吹奏楽部でサクソフォンを吹いていました。高校でも吹奏楽部に入るんだけど、ときどき弦楽部と合同でオーケストラを編成して演奏する機会があったんですね。オーケストラにはサクソフォンのパートがなかったから、オーボエを演奏するようになるんです」

──高校卒業後、なぜ音楽演奏家ではなく音響設計家を志すようになったのでしょうか。
「どう考えてもプロの音楽家としてやっていくのは無理だろうと分かっていたし、やっぱり音楽に近い職業に就きたいとは思っていましたから。もともと理数系なところもあったので、そのあたりを兼ね備えた職業として浮かんできたのが音響設計家という仕事だったんです。ただ、ホールの音響設計は今以上にマイナーな仕事で、僕自身どんな仕事なのか分かってなかったんだけど(笑)」

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