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コラム
風刺画で読み解く「超大国」の現実 Superpower Satire
トランプの「言い間違えた」を信じられる?(パックン)
(c) 2018 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION
<ロシア疑惑に関してアメリカの情報機関よりプーチン大統領の方が信用できるような発言をして猛批判を浴びたトランプ。「言い間違えた」と訂正したが......>
フィンランドの首都ヘルシンキで7月16日に行われた米ロ首脳会談後の会見で、記者からドナルド・トランプ米大統領への鋭い質問があった。アメリカの情報機関はどれもロシアが2016年の大統領選挙に介入したことを確認している。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は否定している。あなたはどちらを信じますか?と。
トランプはこう答えた。「プーチンは(犯人は)ロシアじゃないと言っている。これだけは言っておこう......」。その続きが「I donʼt see any reason why it would be(〔犯人がロシアである〕理由は何も見当たらない)」という爆弾発言。自分の政権が仕切る自国の情報機関より、対立関係にある外国の大統領を信じる。民主主義制度の根幹となる選挙に介入した犯人をかばう。反逆行為とも騒がれるような言語道断の言動だ。
当然、政界もメディアも世論も反発で沸き上がり、翌日トランプは I misspoke(言い間違いだった)と訂正した。wouldnʼt と would を混同したが、本当は「ロシアじゃない理由は何も見当たらない」と言いたかったと、苦しい弁解をした。
そう言われても、国民のほとんどは信用しない。理由は2つある。1つは、ロシアに対するトランプの態度。訂正した後、「ロシアが犯人だという、情報機関の判断を信じる」と言いながら、「ロシア以外も考えられる」と、再び懐疑的な姿勢を見せた。
その次の日には、コーツ国家情報長官がロシアからのサイバー攻撃への警戒を呼び掛けているなか、トランプは会見で「ロシアは今もアメリカを狙っているのか」と聞かれて No と答えた。さらに、プーチンを今秋にホワイトハウスに招待することが発表された。犯人だと思っているなら、なぜVIP扱いする?
もちろん、これらも言い間違いの可能性はある。本当は「ロシア以外は考えられない」とか「Yes」とか「ホワイトハウスに招待しない」とか言いたかったのかもしれないね。
風刺画が指摘しているのは、国民が信用しないもう1つの理由。それはトランプのウソ歴だ。政治家の発言の真否を精査するワシントン・ポスト紙のファクトチェッカーによると、就任からの1年半余りでトランプは4200以上もの「真実に反する、または惑わせるような発言」をしているという。つまり、毎日8回近くのペースで俗にいう「ウソ」をついているのだ。
そんな背景があったら、「言い間違いでした」という主張を信じるより、「言い間違いでした」という主張自体もウソだったと思ってしまうよね。
<本誌2018年8月14&21日号掲載>
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