コラム

ポスト終身雇用を成功させる5つのポイント

2019年05月14日(火)19時00分

4点目は、仕事の進め方の標準化ということです。日本企業の間接部門、特にアドミと言われる総務、経理、人事の三分野は、企業によってルールも仕事の進め方もマチマチです。よく言えば、企業風土に合った方法を続けているわけですが、場合によっては法律スレスレの灰色運用をしていたりもします。

そのために、外注化もできないし、秘密を抱えた人間は社外に出せない、反対に社外の優秀な社員が来ても灰色の度合いが合わないと浮いてしまうなどの問題があります。それ以前の問題として、経理部の新卒は経理を知らない方がいい、色がついていると困るなどという発想を持つ企業もあるようです。

こうしたダーティで曖昧な仕事の進め方をスパッと整理し、特に経理部門は限りなく国際標準に近づけた会計へ、人事部門は権限を縮小して採用権を現場へ移す、法務部門は社内弁護士を中心にする、などの改革をして人材を流動化しつつ、徹底的に効率を高める工夫が必要です。

5点目はコミュニケーションです。人材が流動化するということは、より実力本位、機能本位の人事配置がされるようになるということです。その場合に、職位の上下によって敬語を使い分けたり、人格的な服従を強いたりというのでは、全く組織が動かなくなります。社内であっても、そして職位が上の人間から下の人間に対してであっても、メンバーは人格的には対等で、プロフェッショナルなリスペクトを払う、そのようなコミュニケーションのスタイルを取り入れなくては、組織は回らなくなるでしょう。

このように、日本独自の終身雇用による閉ざされた「ネバネバした共同体」を、この機会に風通しの良い、機能本位で、その代わり全構成員がお互いにリスペクトし合う集団に作り変えていく、これは必須の改革だと思います。低落傾向であった日本の生産性も、それによって世界の標準に近づけることも可能になるはずです。

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

世界のM&A、4月は前年比11%増の2581億ドル

ワールド

マレーシア中銀、政策金利据え置き 成長見通しに下振

ビジネス

NTT、NTTデータを完全子会社化 2.3兆円でT

ワールド

豪ウッドサイド、年次総会で環境団体が抗議 株主の不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 3
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 9
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story