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冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
北朝鮮核実験とアメリカの忍耐
今回の核実験、ミサイル発射実験が起きる前から、オバマ政権は北朝鮮に対しては相当に「腹に据えかねている」という状態でした。というのも、3月に中朝国境地域を取材していた韓国系と中国系のアメリカ人女性記者2名が、北朝鮮当局に拘束されており、度重なる釈放要求が聞き入れられていないからです。そんな中で起きたのが今回の地下核実験と短距離ミサイル試射でした。オバマ政権は、直後に会見して北朝鮮を非難、スーザン・ライス国連大使は安保理での非難決議に動くと共に、アメリカのTVを通じて北朝鮮に対する厳しい批判を加えています。国際社会に向けて「核廃絶」を訴え始めたオバマ大統領に対する挑戦を許すわけには行かないからです。
ところが、アメリカ社会の反応は至って冷静です。冷静という背景にはカレンダーの問題がまずありました。第1報が入ったのが日曜日の晩で、翌日の月曜が「メモリアルデー(戦没者慰霊の日)」の休日だったのです。通常、休日のTV番組というのはニュースの要素が少ないので、結果的にこの北朝鮮問題が扱われる量も少なかったのです。また、この5月末のメモリアルデーというのは、久々の祝日、しかも陽気は初夏ということで、外出したり、屋外でバーベキューをする人が多かったということもあります。そうした気分を吹き飛ばすほどの緊急事態という判断は各TV局はしなかったのです。
そうは言っても、アメリカが休日だった月曜日に、アジアやヨーロッパでは「有事のドル買い」という現象が起きました。では、これに対する火曜日週明けのアメリカの反応はというと、「ドルが買われるほどの有事」というリアクションはありませんでした。それどころか、先週かなり強まっていた「ドル売り」のトレンドが収まったということで、市場にはドル高圧力を歓迎するムードも出たぐらいなのです。その市場ですが、26日火曜日には「消費者信頼感指数」が急激に伸びたために、NY市場は急伸、GM(ジェネラル・モータース)への破産法適用が秒読みというナーバスな雰囲気も吹っ飛ぶほどの「ポジティブ」ムードで、北朝鮮危機の悪影響は全くなかったと言えるでしょう。
その火曜日のニュースですが、トップ扱いになったのは、オバマ大統領が最高裁判事候補に初のヒスパニック系で女性のソニア・ソトマイヨール判事を指名したというニュースで、各局とも大きな扱いでした。そんな中、週明けのオバマ政権は「実験に関しては事前通告があった」とか「核爆発としては100%の成功ではなかった」という情報を出して、更に事態の沈静化に努めているようにも見えます。
では、アメリカは「弱腰」なのでしょうか? この地域の問題は中国をはじめとする関係国に任せて、自分たちはもう積極的に関与するつもりがないのでしょうか? ここからは私の推測になりますが、そうではないと思います。その背景には、イランの動向があります。イランは、北朝鮮同様に軍事転用可能(と思われた)の核開発を続けたり、他でもない北朝鮮からミサイル技術を輸入しようとしていたなどとして、アメリカは警戒をしていました。また北朝鮮同様に、アメリカ人の女性ジャーナリスト(ロクサナ・サベリさん)を拘束して交渉材料にしていました。
ですが、ここへ来てイランの姿勢は軟化しています。大統領選を前にして、分裂しているにしても改革派には勢いが出てきており、アハマデネジャド大統領は強硬姿勢を崩さざるを得なくなっています。サベリさんが釈放されたばかりか、アハマデネジャド大統領は核兵器の開発を否定、25日にはサベリさんと同じ日系女性ジャーナリストのアン・カリーさん(NBC)との会見にも応じるなどどんどん軟化しています。それどころか「盟友」だったはずの北朝鮮の核実験についても、国際社会と足並みを揃えて非難を始めているのです。
ということで、アメリカ外交にとって非常に頭の痛かったイランの問題が軟化してきたということは、北朝鮮問題に関しても、イランに核やミサイルの技術を流す懸念という要素が減ったことになります。勿論、北朝鮮としては、核関連技術をイランに売れないとしても、アジアの安全保障を揺さぶることはできるのでしょうが、それでもイランとの「地下取り引き」の関係が断てれば外貨収入も止まるわけで、そのあたりにアメリカが「内心は腹に据えかねている」中にもガマンを続けていられるという背景があるのだと思います。
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