Picture Power

震災から1年---写真が今できること

Remembrance 3.11

Photographs by ニコンサロン連続企画展より

宍戸清孝写真展「Home」より

 被災地では一周忌法要の知らせが次々と届き、悲しみを新たにしている。洋々とした豊かな海は黒い水の山と化し、温かい生活の営みを一瞬にして奪い去っていったあの日、膨大な数の写真が失われたと同時に、膨大な数の写真が生み出され未曾有の大災害が世界中に伝えられた。 

 以来多くの写真家たちは、被災地を撮る意味とは何か、写真でできることとは何か、自問自答を繰り返しながら、変わり果てた街、そこに生きる人々たちと真摯に向き合い、それぞれの視点と手法で震災を捉えてきた。東京・銀座と新宿、大阪のニコンサロンでは、写真と大震災を多面的な角度から省察する8つの特別展と5つのシンポジウム「ニコンサロン連続企画展 Remenbrance 3.11」を開催している(銀座:3/27まで、新宿:3/26まで、3/22から大阪へ巡回)。

 仙台出身の宍戸清孝は土台だけが残った家の跡地からそこに暮らした人々が戻るべき「Home」を思い石巻や陸前高田を巡り、新井卓は写真黎明期の技法ダゲレオタイプ(銀板写真)で1枚ずつ確かめるようにして沿岸部や福島を撮り続ける。また、40地点もの定点観測を行う和田直樹ほか、石川直樹、笹岡啓子、吉野正起、田代一倫、鷲尾和彦が参加している。

 地震や津波はまたいつかやってくる。それらを人間の力でなくすことはできないが、私たちが記憶している東日本大震災を、世代を超え海を越え伝えることによって、悲劇を最小限に留めることはできるだろうか。「絆」を号令だけに終わらせず、目の前に立ちはだかる復興への課題を克服することはできるのだろうか。

 1年の節目を迎えた今、この時代に生きた私たちの責任が問われている。

ーーー編集部・片岡英子

 関連リンク
ニコンサロン連続企画展&シンポジウム「Remembrance 3.11」
(詳しい日程はニコンサロンのサイトでご確認ください)

MAGAZINE
特集:米大統領選 決戦前夜の大逆転
特集:米大統領選 決戦前夜の大逆転
2024年10月22日号(10/16発売)

米大統領選を揺るがす「オクトーバー・サプライズ」。最後に勝つのはハリスか? トランプか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア兵の正面に「竜の歯」 夜間に何者かが設置か(クルスク州)
  • 2
    目撃された真っ白な「謎のキツネ」? 専門家も驚くその正体
  • 3
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせる作戦か、戦争でタガが外れたのか
  • 4
    裁判沙汰になった300年前の沈没船、残骸発見→最新調…
  • 5
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 6
    衝撃の暴露...トランプとプーチンの「黒い蜜月」・核…
  • 7
    ナチス・ドイツの遺物が屋根裏部屋に眠っていた...そ…
  • 8
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 9
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 10
    大谷翔平効果か......ワールドシリーズのチケットが…
  • 1
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 2
    『シビル・ウォー』のテーマはアメリカの分断だと思っていたが......
  • 3
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア兵の正面に「竜の歯」 夜間に何者かが設置か(クルスク州)
  • 4
    目撃された真っ白な「謎のキツネ」? 専門家も驚くそ…
  • 5
    「メーガン・マークルのよう」...キャサリン妃の動画…
  • 6
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 7
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 8
    東京に逃げ、ホームレスになった親子。母は時々デパ…
  • 9
    ビタミンD、マルチビタミン、マグネシウム...サプリ…
  • 10
    性的人身売買で逮捕のショーン・コムズ...ジャスティ…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 4
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 5
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 6
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 7
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 8
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
  • 9
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 10
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中