コラム

パックンが斬る、トランプ現象の行方【後編、パックン亡命のシナリオ】

2016年03月11日(金)15時30分

11月の本選でトランプが勝利して大統領になる可能性は、完全には否定できない Chris Keane-REUTERS

【前編】はこちら

 トランプ人気は否めない。しかし、予備選で通じている手段は本選挙では通じないはず。

 例えば、経済的な不満を持つ人々の怒りの矛先を移民に向ける作戦。今は効いているが、本選挙ではヒスパニック系の有権者が勝利の鍵を握る。職業政治家へのバッシングも今は威力を発揮しているが、本選挙では大統領選と同時に議員選挙も行われる。同じ投票用紙に、同じ共和党の職業政治家の名前がいっぱい載っている。各選挙区の有識者を敵に回すと苦戦するはず。唯一、本選挙でも有効なのは髪型の面白さぐらい。あれだけはいつでも効く。

 つまり、物事が普通に進めば、トランプが大統領になるはずはない。しかし、トランプがこんなに躍進するとは誰もが予想していなかったのだから、これから11月までの間に大きな情勢変化が起きる可能性も完全には否定できない。であるなら、その最悪な状況を想定しておかなくてはならないだろう。ということで、トランプが勝つシナリオを3つにまとめてみた。 

 その一:大型テロ攻撃や経済崩壊

 9・11またはリーマンショックのような緊急事態が起きてしまったら、オバマ政権の失敗と見なされ、安全保障も経済も民主党に任せられないという風潮が高まる。具体策を発表していなくても強いリーダーになると信じられ、トランプが選ばれるかもしれない。トランプ大統領の誕生は二次災害だ。

【参考記事】#ネバートランプ! 共和党主流派の遅過ぎた?逆襲

 その二:ヒラリー クリントンの新たなスキャンダルや大病

 どの候補でも、選挙前に不祥事が発覚したり、急病になった場合には、票は集まらないはずだ。しかも「信用できない」というイメージが深く根付いているクリントンにとって、そのダメージはもっと大きくなるだろう。以前から「本当は脳梗塞で2度倒れた」とか、「大病を抱えているのにすべて隠している」といううわさが流れている。クリントン側は、健康診断を担当した医師の報告をもって無根拠なうわさを否定してはいる。否定すればするほど怪しいけどね、信用できないと思われている人はなおさら・・・。

 ちなみに、トランプの担当医からも報告が出ているが、それによるとトランプ氏の健康状態はastonishingly excellent(驚異的にすごい)らしい。さらに「当選したら史上最も健康な大統領になる」と推す。診断中にトランプの誇張病が先生に感染したみたい。

 その三:宇宙人によるアメリカ人の脳崩壊

 宇宙人が地球に来て、アメリカ人の脳みそを吸い取ったり腐らせたりして、国民の過半数が理性を失えば理不尽な選挙結果になり得る・・・おっと、もしかしたら、宇宙人ってトランプのこと? もう始まっている? ノォォ~~~!

 きっとない。トランプ大統領という悪夢はきっと実現しない。でも、万が一にでも、トランプが大統領になった場合、日本の皆さん、お願いします。国籍ください!

 亡命でも、難民申請でも何でもします! 毎日お味噌汁飲みます!

 トランプ大統領のアメリカにだけは、住まわせないでください!!

 あとカナダにもね。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

韓国政府「市場安定に向け無制限の流動性を注入」、ウ

ワールド

ネタニヤフ氏、停戦は戦争終結でないと警告 イスラエ

ワールド

ウクライナ、新型国産ミサイルの試験実施 西側への依

ワールド

ヒズボラ停戦合意崩壊ならレバノン自体を標的、イスラ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 2
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説など次々と明るみにされた元代表の疑惑
  • 3
    NATO、ウクライナに「10万人の平和維持部隊」派遣計画──ロシア情報機関
  • 4
    スーパー台風が連続襲来...フィリピンの苦難、被災者…
  • 5
    シリア反政府勢力がロシア製の貴重なパーンツィリ防…
  • 6
    なぜジョージアでは「努力」という言葉がないのか?.…
  • 7
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 8
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 9
    「92種類のミネラル含む」シーモス TikTokで健康効…
  • 10
    赤字は3億ドルに...サンフランシスコから名物「ケー…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 6
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 7
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 8
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 9
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合…
  • 10
    バルト海の海底ケーブルは海底に下ろした錨を引きず…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story