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スペインメディアが中立を捨て、自己検閲を行い始めた
スペインの首都マドリードに拠点を置くテレビ局の中継に、「政治犯釈放」とカタルーニャ語で書かれたビラを持って、テレビ画面に映り込もうとするカタルーニャ市民たち。カタルーニャ州議会議員8人と独立派市民団体のリーダー2人の釈放を求めるデモで(バルセロナ、11月8日) Photograph by Toru Morimoto
<カタルーニャ独立問題を機に、カタルーニャ公共放送にスペイン政府が介入し始め、首都マドリードのメディアも政府に追従して「独立派」批判を繰り広げている>
「ボン・ディア! ダスペルタ、カタルーニャ(おはよう! 起きて、カタルーニャ)」
まだ薄暗い朝、カタルーニャ人女性ジャーナリスト、モニカ・タリバスの声がラジオから聞こえる。
「7時です。カタルーニャ・ラジオ『朝』です」
こうして、カタルーニャの1日が始まる。
カタルーニャの公共放送は、カタルーニャ・ラジオとカタルーニャ・テレビの2つで、カタルーニャ語のみで放送されている。
カタルーニャ・テレビは、総合チャンネルTV3をはじめ、24時間ニュース、スポーツ、子供向けなど合計6チャンネルを保有している。これらの他に、現地の一般家庭では、スペイン国営テレビ局、スペイン全国ネットの民間テレビ局など、多くのスペイン語チャンネルも視聴できるが、地元カタルーニャ・テレビの人気は根強く、特にTV3は、最も視聴されているチャンネルだ。
フランコ独裁政権時代を彷彿させる党員の言動で、たびたび炎上騒ぎを起こしている国民党が率いるスペイン中央政府は、10月28日のカタルーニャ自治権剥奪後、TV3に対して圧力を強めている。
その理由は「中立でない」から。国民党のシャビエル・ガルシア・アルビオルは、TV3が「カタルーニャ独立を支援する『(元州首相カルラス・)プッチダモン・テレビ』だ」と揶揄し、「一旦閉鎖して『まともな人間』たちで再開するべきだ」と、政府によるテレビ局への直接的介入を主張する。
では、どのテレビ局が中立的なのだろうか。
報道の中立性や言論の自由度などを調査する独立機関CAC (カタルーニャ・オーディオ・ビジュアル委員会)が、10月1日のカタルーニャ独立を問う住民投票について、スペイン国内のテレビ各局がどう報じたかを調べた。
調査結果によると、TV3がカタルーニャ州議会を構成する7政党全ての賛否両論の声を流すなど、最も多様な意見を報じ、バランスの取れたテレビ局だという結果が出た。一方、スペイン政府側メディアのTVE Catalunya(スペイン国営テレビ局TVEのカタルーニャ地方チャンネル)は、独立派政党の声を全く報じなかった。
また、調査ではどのテーマが放映時間を多く占めたかも調べているが、国外から注目を集め、英BBCや米CNNでも報じられ、TV3では31.3%を占めた「スペイン警察によるカタルーニャ市民への暴力的行為」は、TVE Catalunyaではほとんど報道されず、2.8%しかなかった。TVE Catalunyaでは「法律に従って執行されたスペイン警察の行動」という項目が20.7%を占める。逆に、「市民によるスペイン警察への暴力的行為」は、TVE Catalunyaでは7.0%だが、TV3ではほぼ報じられていない。放送局のバックグラウンドによって、報道内容が大きく異なっている。
実際、スペイン国営テレビ局(TVE)系列の報道姿勢には疑問が多く、住民投票翌日に身内からの反乱が起きている。TVEに勤務する記者たち自身が、カタルーニャの住民投票に関する自社の偏向報道に抗議して、「恥」と書いた紙をマドリードのオフィス内で掲げ、自社会長の辞任を求めたのだ。
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