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企業不祥事がなくならない理由は「ダブルバインド・コミュニケーション」
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昨年11月、国交省に報告書を提出した日産の西川廣人社長 Toru Hanai-REUTERS
<忖度さえ生んでしまう「double bind」のコミュニケーションが、相次ぐ不祥事の背景にある。不祥事を防ぐには、人事制度の変革が必要だ>
筆者は人間心理への理解を強みとして、経営コンサルや組織人事コンサルを行っている。その立場からすると、企業の不祥事が立て続けに発覚することが気になってならない。つい先日も、電線大手のフジクラが社長会見を開き、品質不正を謝罪した。他にも免震ゴム性能評価不正を行った東洋ゴムを筆頭に、神戸製鋼所、三菱マテリアル、東レ、日産自動車、SUBARU(スバル)など、名だたる企業が並ぶ。
特に気になるのは、例えば日産のようなケース。昨年の不正発覚時には社長が直接カメラの前に現れて謝罪したが、その後も社内では引き続き不正が行われていたのだ。社長の謝罪会見をテレビで見ていない社員などいないだろう。それにもかかわらず、不正が続いていたのである。
日産に不正を防ぐ「制度」は存在したのか
ご存知のとおり今年7月、日産の新たな不祥事が世間を賑わせた。燃費・排ガス試験で測定する際の条件を満たしていないにもかかわらず、試験を有効としたりデータを書き換えたりしていたという内容だ。
「新たな」不祥事と紹介したとおり、日産は昨年9月、国土交通省の立ち入り検査を受け、国内工場で無資格者が完成検査を行っていたことが発覚。10月には、西川廣人(さいかわ・ひろと)社長が謝罪会見を開いた。国交省は今年3月、日産本社に対し、問題を把握していながら各工場に適切な指示をしていなかったことなどを改めて指摘し、2度目の業務改善指示処分を与えている。
これだけの不祥事を起こし、社長が会見の場で「襟を正す」と誓ったにもかかわらず、今年に入っても検査工程での不正を続けていたというのだ。
日産ともあろう企業が、なぜ、このような事態を引き起こす状況に陥ってしまったのだろう。トップが公の場で「襟を正す」と誓い、社内的には不正の根絶を厳命すれば、社員は即座に不正に手を染めることをやめるはずだ。
さらに、コンプライアンスに背くような行為を役員や従業員がした場合、減給や降格、懲戒解雇といった厳罰が下るような就業規則や社内ルールがあったか、もしくは不正が発覚した後に間髪入れずそうした規則を追加していれば、再度の不正は防げたはずだと普通は考える。
しかし、日産は「普通」ではなかったのだ。最初の不正発覚時に、罰則を適用していたのか。そもそも、厳罰が下るよう就業規則やルールを改定していたのか。9月26日に発表した「完成検査における不適切な取扱いへの対応等についてのご報告」(日産自動車作成)でも、そのあたりは明確にはされておらず疑問が残る。
「襟を正す」と号令を掛けた後に不正を続けていても、経営側は罰を与えるまでではないと考えたのか、それとも、現場では罰が分かっていても、不正を続けざるをえない何かがあったのだろうか。
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