アベノミクスが目を背ける日本の「賃金格差」
非正規雇用の多いサービス分野では特に賃金が抑圧されているのは勿論のこと、非正規雇用が少なく賃金の高いとされる日本の製造業においても、生産性の上昇よりもかなり低い賃金上昇しか見受けられないことについて。グローバル企業が新興国との国際的な賃金格差により敏感となり、日本国内の賃金を抑制したという国際競争力の観点はよく指摘されることですが、実のところは日本国内の他のセクターの非正規雇用労働の比率が多い結果、賃金が抑制されているために、企業として余裕のある製造業でも高めの賃金を提示する必要に迫られなくなったことも大きく影響しているとしています。
企業が営利活動を目的としている以上、放っておけば賃金の安い方に収束されてしまうのは当然予想できるわけですから、なるべく賃金の高い方に収束していくよう、これは制度設計をするしかありません。それにはまず『同一労働・同一賃金』が徹底される必要があるわけですが、つい先日可決された労働者派遣法改正案ではが「職務に応じた待遇の均等」から「業務内容及び当該業務に伴う責任の程度その他の事情に応じた均等な待遇及び均等の取れた待遇」と骨抜きにされたことで実質的に同一賃金にしなくてもよいという解釈もできるようになってしまいました。これはILOの正規・非正規雇用の賃金格差是正で需要の創出をとする提案からも、「様々な雇用形態の中で、経済成長を育みながらいかに適切な労働保護と社会的保護を提供していくか」とした課題からも、つまり国際的な潮流から完全に逆行した形です。
時の政権が担う経済政策が機能してくれなければ一般国民の経済生活は困窮してしまいます。だからこそ、政権の政策運営が上手くいって欲しいと願うのは当たり前のことで、そのための建設的批判があるのも当然。それを受け入れられないとすれば誠に遺憾なことですし、これまでの政策、制度の過ちがあるならそれを認めなければ次のステップにも進めません。経済政策にしても、制度設計にしても、国立競技場の建設問題にしても、過ちを糺すためにはまずは非を認める、その作業がどうも日本人は(と限定するのも語弊がありますが)苦手なようです。そうした気質がありとあらゆるとことで巣食っているために問題が改善しないまま長期化するだけとなる。非を認めた勇気と方向転換はリスペクトに値するものでもあるのですが、そこから目を背けてしまう。そうしたことに日本の抱える本質的な問題があるのかもしれません。
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