コラム

極右政党を右派ポピュリズムへと転換させたルペンの本気度(前編)

2017年04月12日(水)18時15分

注目のフランス大統領選は、第一回投票日が近付いている Gonzalo Fuentes-REUTERS

<投票が近づいたフランス大統領選の選挙情勢を概観する前編。現職オランドは、付加価値税(日本の消費税)の引き上げで総スカンをくらった>

昨年はブレグジット国民投票、トランプ政権の誕生と「まさか」の連続だったわけですが、二度あることは三度あるかもしれない?ということで、間近に迫ったフランスの大統領選につきまして。

お恥ずかしい限りですがワタクシは一切フランス語がわかりませんし、仏文化への素養もほぼ皆無という状態だったにもかかわらず、最近になってフランス情勢に触れるようになったのは、ほかでもない平素何かと活動をともにしている堀茂樹・慶応大学名誉教授のおかげです。

もともと欧州関連の良質な情報が圧倒的に少ない情況下で、今回の仏大統領選の話題にしても国内メディアで取り上げられる内容は極めて限られているわけですが、3度目の「まさか」の可能性が出てきた現状、取り敢えず把握しうる限りの正確かつ最新のフランス情報が渇望されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、今回の内容は先日開催された市民のための勉強会である「オイコスの会」(堀教授とともに共同代表を務めております)での堀教授の講義「2017年のフランス共和国大統領選挙」の概略をお伝えできればと思います。

トゥール・ド・フランスでご覧の通り、フランスの国土は山あり平野ありの六角形をしています。その中心の上寄りにパリがあり、面積としては日本より広いですが、人口は日本の約半分の6500万人となっています。

単一民族ではなく、オリジンは様々という意味では少し米国に似ていると言えるかもしれません。六角形の国土の右上からベルギー、ドイツ、スイス、イタリア、下には地中海、左下にスペイン、海峡をまたいで英国にぐるっと囲まれています。

【参考記事】大統領選挙に見るフランス政治のパラダイムシフト

社会文化的に、パリを含む上から下までの中央部分のベルト地帯(人口・面積の2/3を占める)と、それ以外の周辺地域では様相がかなり違っており、エマニュエル・トッド氏の言葉を借りれば中央ベルト地帯は「南米っぽい」、平等主義でヒエラルキーに屈しない気質。それ以外の周辺地域は「ドイツっぽい」気質でどちらかと言えば日本的でもありお堅いとのこと。

つまり、非常に保守的なところでそうでないところがフランスにはあり、多様であるがゆえに一体感と分裂とに揺れやすくもなります。ちなみに、外資系の工場などが生産拠点を移してきて上手く稼働、定着するのは周辺地域だそうです。

統治形態は民主主義ですが、国家の体制は国王や天皇のいない共和制を敷いています。英語で共和制は「republic」ですが、public=「公」、reはラテン語のRes=「もの」であり、語源を辿れば「公のもの」との意味になります。特殊利益よりも公共の利益に重きを置く発想です。現在は第五共和政(1958年の国民投票により承認された新憲法で成立、ドゴールが大統領へ。王権を停止した1792年から第一共和政がスタート)で、政教分離を原則としています。

プロフィール

岩本沙弓

経済評論家。大阪経済大学経営学部客員教授。 為替・国際金融関連の執筆・講演活動の他、国内外の金融機関勤務の経験を生かし、参議院、学術講演会、政党関連の勉強会、新聞社主催の講演会等にて、国際金融市場における日本の立場を中心に解説。 主な著作に『新・マネー敗戦』(文春新書)他。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA

ビジネス

根強いインフレ、金融安定への主要リスク=FRB半期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 6

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story