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アングル:ミャンマー大地震で中国が存在感、影薄い米国はトランプ氏の政策響く

2025年04月05日(土)07時55分

ミャンマーで3月28日にマグニチュード(M)7.7の大地震が発生すると各国が支援の提供や救助隊の派遣を行ったが、中でも特に強い存在感を発揮しているのが中国だ。写真は、被災したマンダレーで3月31日撮影。China Daily提供写真(2025年 ロイター)

Poppy McPherson Antoni Slodkowski

[バンコク/北京 2日 ロイター] - ミャンマーで3月28日にマグニチュード(M)7.7の大地震が発生すると各国が支援の提供や救助隊の派遣を行ったが、中でも特に強い存在感を発揮しているのが中国だ。救助隊の活躍ぶりがソーシャルメディア上で拡散し、政府も多額の支援を行う方針を早々に打ち出した。

一方でトランプ政権の連邦政府合理化策により、対外支援を担う米国際開発局(USAID)がまひ状態に陥っている米国は影が薄く、支援に熱心な中国との差が際立っている。

中国はミャンマーの軍事政権を支持しているため、これまでソーシャルメディアでは否定的なとらえ方をされることが多かった。しかし今回の大地震では青とオレンジの作業服を着た中国の救助隊の活動を映した動画がネット上で広がり、中国への見方が大きく変化している。

中国はこれまでに1億元(約1376万ドル)相当の支援物資を提供すると約束。テントや毛布、救急キットを含む第一陣の援助物資が3月31日にヤンゴンへ到着したという。

一方、かつては世界最大の人道支援国だった米国が申し出た支援は200万ドルと控えめ。米政府は3人の調査チームをミャンマーに派遣すると発表したが、軍事政権によるビザ発給の問題で到着が遅れている。

ミャンマーの大地震における米国の存在感の薄さから、米国はトランプ氏の政府合理化策によって災害対応能力が著しく低下していることが浮き彫りになったと、現職および元米政府高官3人がロイターに語った。

USAIDの人道支援部門のトップを務めたマーシャ・ウォン氏は、USAIDがきちんと機能していれば、都市型捜索救助隊(USAR)を48時間以内にミャンマーへ派遣することができたはずだと指摘。実際には対応を調整するはずのスタッフの大半が解雇され、外部の協力機関も契約を打ち切られてしまったため「(米国の)不在が、他の国や組織が入り込む余地を生み出してしまった」とほぞをかんだ。

元駐ミャンマー米国大使のスコット・マーシエル氏も、ミャンマー軍事政権が大規模な米軍チームの受け入れを許可した可能性は低いとしつつも、予算削減がなければ「より迅速かつ強力な対応」が可能だっただろうと語った。

<主導権握る中国>

トランプ米政権はミャンマーの大地震発生から数時間後に、計画通りUSAIDの残りの職員のほぼ全員を解雇し、海外でのミッションを打ち切ると議会に通告した。一方、中国は医療従事者、地震専門家、野戦病院の職員、救助犬を含む緊急援助隊を現地に派遣。中国隊は特にマンダレーやザガインなど、軍事政権の支援がほとんどとどかない地域での活動が目立った。さらに中国は国営メディアを駆使して救助活動を発信。英語放送を行う国営の中国国際テレビ(CGTN)は、災害の震源地であるマンダレーから生中継でリポートを行う数少ない海外メディアの一つとなった。

さらに中国は救助隊の一部が雲南省から陸路により、反軍政勢力が支配する地域を通過してミャンマーに入った。アナリストのサイ・トゥン・アウン・ルイン氏は、中国が空路だけでなく陸路で救援隊を派遣する決定を下したことから、軍政と反政府勢力の双方に影響力を持っていることがうかがわれると分析。中国は事実上、反政府勢力と軍政の支配地域をまたぐ「人道回廊」を開いたように見える形で「ソーシャルメディア上で反中感情が大幅に低下している」と付け加えた。

<米の影響力低下>

ミャンマーは中国とインドの間に位置し、両国にとって戦略的に極めて重要な国だ。米政府もミャンマー軍事政権が2021年にノーベル平和賞受賞者である民主化指導者アウンサンスーチー氏率いる民主的な政府を転覆させるまでの短い期間はミャンマーと良好な関係にあった。

ミャンマーの軍事政権は反政府勢力を弾圧し、内戦が激化しているが、軍事政権はなお中国政府の支持を受けており、反体制派の多くは軍事政権の後ろ盾となっている中国を否定的に捉えている。シンガポールのシンクタンク、ISEAS-ユソフ・イシャク研究所が2024年に実施した調査では65%が中国を信用していないと回答した。

米政府は人道支援や民主化運動への資金提供を通じてミャンマーで影響力を維持してきたが、トランプ氏による最近の予算削減でそうした力はほぼ消滅した。マルシエル元駐ミャンマー米国大使は、ミャンマーとの関係は米国民にとっても重要だと指摘。米国が国家レベルの課題に対して国際的な支持を得られるかどうかは、その影響力の大きさによって決定的に決まるからだと理由を説明した。

ロイター
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