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焦点:難題山積のEU、来年は英離脱選択なら壊滅的打撃
12月20日、EUはどこから見ても地獄だったが、来年は英国民がEU離脱に投票すれば、もっとひどい年になるだろう。11月ロンドン市内で撮影(2015年 ロイター/Toby Melville/files)
[ブリュッセル 20日 ロイター] - 今年の欧州連合(EU)はどこから見ても地獄だったが、来年は英国民がEU離脱に投票すれば、もっとひどい年になるだろう。
今年は難民の大量流入、ギリシャ債務危機、「イスラム国」による攻撃、ロシアの軍事行動など、政治、経済の両面で衝撃的な出来事が相次いだ。EU各地で国境審査が復活し、反EUを掲げる大衆迎合的な政治勢力が台頭し、EU各国は非難の応酬を繰り広げた。
欧州委員会のユンケル委員長は、EU内を自由に往来できる「シェンゲン協定」を締結している国々が国境審査を再導入すれば、ユーロ自体の存続も脅かされると警告を発した。
欧州の卓越した指導者であるメルケル・ドイツ首相は、大半がシリア難民である数十万人の受け入れに意欲を示し、「われわれにはできる」という精神を示した。しかしユンケル委員長の陰うつなトーンは、われわれを現実に引き戻す。
メルケル首相は、移民受け入れの分担についてEU諸国からほとんど支持を得ていない。
これには、ドイツがEUを支配することへの隠れた反発と、ユーロ圏の金融リスク負担に後ろ向きだったドイツへのしっぺ返しという面もある。
ドイツがロシアとエネルギー面で結び付いているのは偽善的だとの批判もある。フランスやオランダ、デンマークなどの国々はもっと単純で、移民排斥を主張する右派勢力の台頭を恐れて身動きが取れないでいる。
年末のEU首脳会議で、メルケル首相は集中攻撃を受けた。イタリアのレンツィ首相はポルトガルおよびギリシャの後ろ盾を得て、メルケル氏がユーロ圏の預金保証制度を受け入れようとしないことを非難した。
EUがウクライナ問題でロシアに制裁を課し、南欧へと延びるパイプライン計画を凍結している最中に、ドイツとロシアを直接結ぶガスパイプラインの建設をメルケル氏が支持したことを、バルト海諸国、ブルガリア、イタリアは許さなかった。
やり取りを聞いたある外交官は「部屋の中のほぼ全員がメルケル氏の敵だった」と語る。
2016年に一段と悪化しそうな問題として、欧州主要国指導者の政治力が弱まって内向きになる結果、必要な協調行動が取れなくなる恐れが挙げられる。
メルケル氏が首相の座にとどまれるかどうかは、来年ドイツに押し寄せる難民の数を抑え、移民問題を制御できているところを示せるかどうかにかかっている。
国内で「母」と慕われるメルケル氏を欠けば、EUはますます窮地に立たされるだろう。
フランスのオランド大統領にとって、今年は1月と11月のパリ攻撃がすべてだった。
大統領は2017年、極右のマリーヌ・ルペン氏と前任のニコラス・サルコジ氏を相手に選挙に臨み、再選を目指すが、フランスの経済状態は弱く、欧州における影響力は低下している。
キャメロン英首相にとっての関心事は、来年2月に英国のEU加盟条件変更を勝ち取れるかどうかの一点に集中している。これは首相が来年中に実施しようとしているEU残留の是非を問う国民投票で、多数の残留票を勝ち取るための必須条件だ。
首相は事実上、英国の将来を担保に入れて、EU内の東欧諸国出身の移民から、低所得の英国民労働者と同等の手当を取り上げようとしている。多くのEU諸国は、これを違法だと見なすだろう。
英国市民は移民への警戒感を強めている上、キャメロン首相のようなエリートへの反発ムードもある。さらには古くからの欧州懐疑的な姿勢をメディアが煽っているため、国民投票は不幸な結果になってもおかしくない。
欧州第二の経済大国にして二つの主要軍事勢力の一つである英国が、EU離脱に投票する最初の国になれば、EUの信頼感と国際的地位は壊滅的打撃を受けるだろう。
連邦主義者は英国がEUを離脱すれば、残りの諸国はますます結束を強めると信じたがっている。
しかしEU27カ国は東と西、南と北、自由市場主義と保護主義、社会主義と保守主義、国家主権派と統合推進派など、無数の対立が入り乱れているのが実情だ。
英国がEU離脱を選べば、ポーランドからデンマークに至るまで、その他の国々でも国民投票を求める声が湧き上がる可能性の方が高いだろう。
キャメロン首相が勝利して英国民がEU残留を選んだ場合でも、国内の目的のためにEUを人質に取るという首相の戦術を真似しようとする指導者が出てくる可能性がある。
あるEU高官は「残念ながら、われわれはキャメロン氏に勝ってもらう必要がある。しかしそれは欧州全体にとってリスクだらけだ」と話した。