アングル:インド株、外国人投資家離れが加速 中国シフト鮮明に

3月19日、外国人投資家のインド株離れが進み、過去最速ペースで売りが出ている。写真は11日、ムンバイにあるボンベイ証券取引所前で撮影(2025年 ロイター/Francis Mascarenhas)
Jaspreet Kalra Ankur Banerjee
[ムンバイ/シンガポール 19日 ロイター] - 外国人投資家のインド株離れが進み、過去最速ペースで売りが出ている。一方で中国株には盛んに買いが入っており、インドと中国はこの半年間で形勢が逆転した。
インドでは高インフレと金利上昇により企業収益が悪化しており、ナショナル証券取引所に上場する50銘柄で構成するNSE指数が昨年9月の最高値から13%下落し、時価総額が1兆ドル吹き飛んだ。一方の中国は景気刺激策への期待が投資家の関心を集めている。
モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントのソリューション&マルチアセットグループ副最高投資責任者(CIO)、ジタニア・カンダリ氏は「資金はインドではなく、中国に流れている」と話した。
外国人投資家が昨年10月以降にインド株式市場から引き揚げた資金は290億ドル近くと、半年間の流出額として過去最高を記録。インド市場はこの数年間、多くの投資家から選好されてきたが、流れが急変した。
流出した資金の多くは中国市場へ向かい、主要中国企業で構成する香港ハンセン指数は昨年9月下旬以降に36%上昇した。中国のスタートアップ、ディープシークがけん引する人工知能(AI)分野への期待が資金を引き寄せたためだ。
消費関連銘柄に重点的に投資する英オーブリー・キャピタル・マネジメントは2年ぶりに中国のポートフォリオ比率をインドよりも高くした。ポートフォリオマネジャーのロブ・ブルーイス氏によると、この数年値動きが好調だったインド株で利益を確保したが、「その一部を中国や東南アジア、他の市場に投入している」と言う。
モルガン・スタンレーやフィデリティ・インターナショナルなど資産運用大手は依然としてインド株に強気の姿勢を保っているが、それでも過去数カ月にインド投資比率を引き下げ、中国への投資を増やしている。
フィデリティ・インターナショナルのアソシエート・インベストメントディレクター、ニティン・マスール氏は、これまでに比べてインド市場に対して慎重な姿勢を採り、投資比率を「少し」引き下げたと明かした。
中国の株式市場は割安で、景気に回復の兆しが出ており、意外にもトランプ米大統領が引き起こした貿易戦争の影響を受けにくい「投資資金の避難先」になっている。
<「極限」だったインド株価>
投資家はインド株が急落する前には、相場の水準が極めて割高であるにもかかわらず、こぞって買いを入れていた。しかし企業収益の伸びが鈍り、今年度の経済成長が過去4年間で最も低調と予想されることから、投資家心理は悪化した。
証券会社のデータによると、NSE指数構成企業は昨年10-12月期の利益の伸びが5%となり、3四半期連続で伸びが1桁となった。1桁に転じるまで2年にわたり2桁が続いていた。
米ノーザン・トラスト・アセット・マネジメントのグローバル・アセット・アロケーション担当チーフ・インベストメント・オフィサー、アンウィティ・バフグナ氏は、インド株式市場は「株価が極限」だったため、業績が少し揺らいだだけで相場が下げに転じたと振り返った。
ボンベイ証券取引所に上場する30銘柄で構成するSENSEX指数は1年後の利益予想に基づく株価収益率(PER)が20倍だが、ハンセン指数は7倍にとどまっていることがLSEGのデータから分かる。
アライアンス・バーンスタインで新興市場株式を担当するサミー・スズキ氏はインド市場のこうした割高な銘柄で利益が減少しているとして、「インド市場からさらに資金が流出する可能性がある」と悲観的だ。
<転換点は今年後半か>
ただ、誰もがインド市場を見限っているわけではない。
ウィリアム・ブレアのグローバル株式戦略のポートフォリオ・スペシャリスト、ライアン・ディマス氏は「インドは主要市場の中では経済面で最も優れた背景を持ち、株式市場を支える要因だけでなく、経済のけん引役も多い」と前向きだ。
とはいうものの、モルガン・スタンレーのカンダリ氏は、外国マネーのインド離れが止まる「転換点」は2025年後半になりそうだと見ている。