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三菱自社員が05年不正指摘、11年に経営陣把握しつつ現場任せ=調査委

2016年08月02日(火)23時01分

 8月2日、燃費不正問題の実態解明に向けて三菱自動車が設置した特別調査委員会(委員長:渡辺恵一弁護士)は2日、不正の原因や経緯をまとめた報告書を公表した。写真は三菱自のロゴ。都内で5月撮影(2016年 ロイター/Issei Kato)

[東京 2日 ロイター] - 燃費不正問題の実態解明に向けて三菱自動車<7211.T>が設置した特別調査委員会(委員長:渡辺恵一弁護士)は2日、不正の原因や経緯をまとめた報告書を公表した。2005年と11年に複数の社員から不正が指摘されていたことが新たに判明。

11年には経営陣も把握していたが、対応を現場任せにした。会社として不正を把握する機会があったにもかかわらず不正を2度見逃した。同委員会は開発本部や不正に関わった部署だけでなく、「経営陣を含む会社全体の問題」との見解を示した。

同委員会は、経営陣は恣意(しい)的に燃費試験データの算出に「直接関与した事実までは認められない」としつつ、「競合車に勝つためトップクラスの燃費達成を求めるばかりで、技術的観点からの実現可能性を積極的に議論した形跡が見当たらない」、「開発の実情や実力を十分に把握したとは言い難く、現場に任せきりにしていた」などと批判。開発部門の各部署幹部らも、不正を働いた「性能実験部の業務や問題に無理解、無関心だった」と指摘した。「自動車開発に対する理念の共有がなされず、全社一体となって取り組む姿勢が欠けていたことが本質的な原因」と総括した。

報告書によると、05年に開催した「新人提言書発表会」で、当時の新入社員が法規に従った方法で燃費試験データを測定すべきだと提言したにもかかわらず、放置された。11年には国内の全従業員を対象に無記名で実施した法令順守に関するアンケートで、開発本部内に「試験結果の虚偽報告」や「品質記録の改ざん、報告書の内容が虚偽」、「認証資料の虚偽記載」などがあるといった今回の不正につながる指摘があった。経営陣にも報告されていたが、調査は不正を行っていた性能実験部が実施し、開発本部に「問題なし」と伝えていたため、踏み込んだ調査などをしなかった。

会見した益子修会長兼社長は「私を含め歴代の経営陣は現場の生の声にもっと向き合う努力をすべきだった」と述べ、「不正を発見できるチャンスを見逃したことを反省している」と陳謝した。問題の背景には「身の丈を超えた過大な車種展開があった」とも振り返り、現場の負担軽減のためにも企画していたプラグインハイブリッド車1車種の開発中止を決めたという。

同報告書はまた、1991年から国が定めた方法ではないやり方で燃費試験データを不正に測定し続けていた理由に関して、国が定めた方法での測定は「煩雑」という共通認識が部内に醸成していた可能性が高いなどと指摘した。

*内容を追加しました。

(白木真紀 編集:山川薫)

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