ニュース速報

ビジネス

豪潜水艦、日本が現地建造を本格検討 技術を移転

2015年09月29日(火)20時03分

 9月29日、豪潜水艦の共同開発候補に名乗りを挙げている日本が、必要な技術を移転し、現地で建造する本格的な検討に入った。写真は海上自衛隊の潜水艦。提供写真(2015年 ロイター/Japan Maritime Self-Defense Force/Handout via Reuters)

[東京 29日 ロイター] - 豪潜水艦の共同開発候補に名乗りを挙げている日本が、必要な技術を移転し、現地で建造する本格的な検討に入った。競合するドイツとフランスに比べ、オーストラリア国内で造ることに後ろ向きとみられていた日本は、現地建造の姿勢を明確にして巻き返しを図る。

日本は豪州の技術者を訓練し、自力で建造できる水準まで能力を引き上げることを検討。三菱重工業<7011.T>と川崎重工業<7012.T>の造船所がある神戸市と、造船産業が集積する南オーストラリア州アデレードの両方で、数百人規模の技術者を指導することを想定している。

「設計段階から技術のトレーニングまで、日豪の技術者が一緒になって進めていく枠組を考えている」と防衛省の石川正樹審議官は述べている。日本は遠洋航海が可能な4000トンクラスのディーゼル潜水艦を建造・運用しており、「日本が持つ技術と経験を移転する」と同審議官は話す。

独力で建造する技術力のない豪州は、もともと要求性能に最も近い日本の潜水艦を輸入することを考えていた。しかし、豪州国外での建造は経済的なメリットがないとして、雇用の創出を重視する野党議員や世論が反発。今年2月、日独仏から提案を募って選ぶ方針に転換した。

3カ国は、1)豪州国内案、2)豪州国外案、3)折衷案──を11月までに提出することを求められているが、日本は独仏に比べて豪州で建造することに消極的だと現地で批判されてきた。安倍晋三首相と良好な関係を築いてきたアボット前首相が9月に退陣したことも、日本には逆風とみられていた。

「豪州が主体的に建造できて、きちんと運用、維持整備ができるよう最大限支える」と日本の政府関係者は言う。部材や部品を供給する豪州企業もできるだけ参画させる方針で、同関係者は「かなり思い切ったやり方を打ち出すことになるだろう」と語っている。

日独仏は来月上旬、シドニーで開かれる海洋装備の展示会にそろって出展する。日本は展示会場のほか、メルボルンでも豪州企業を集めて説明会を開き、現地建造に前向きなメッセージを発信する考え。「説明会では具体的な話をしたい」と石川審議官は述べた。

(久保信博、ティム・ケリー 取材協力:マット・シーゲル)

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

26年世界石油需要は日量143万バレル増、伸び継続

ビジネス

NY連銀総裁「金融政策はデータ次第」、政府巡る不確

ワールド

イスラエルとハマス、ガザ停戦で合意 第1段階は人質

ビジネス

ブラックロック第4四半期、運用資産が過去最高 株高
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    ド派手な激突シーンが話題に...ロシアの偵察ドローンを「撃墜」し、ウクライナに貢献した「まさかの生物」とは?
  • 4
    韓国の与党も野党も「法の支配」と民主主義を軽視し…
  • 5
    【随時更新】韓国ユン大統領を拘束 高位公職者犯罪…
  • 6
    中国自動車、ガソリン車は大幅減なのにEV販売は4割増…
  • 7
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 8
    ロス山火事で崩壊の危機、どうなるアメリカの火災保険
  • 9
    「日本は中国より悪」──米クリフス、同業とUSスチ…
  • 10
    TikTokに代わりアメリカで1位に躍り出たアプリ「レ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」
  • 4
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 5
    ロシア兵を「射殺」...相次ぐ北朝鮮兵の誤射 退却も…
  • 6
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「…
  • 7
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 8
    トランプさん、グリーンランドは地図ほど大きくない…
  • 9
    装甲車がロシア兵を轢く決定的瞬間...戦場での衝撃映…
  • 10
    古代エジプト人の愛した「媚薬」の正体
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中