ニュース速報

ビジネス

ギリシャ首相が緊縮策要求を非難、ユーロ圏離脱に現実味

2015年06月17日(水)09時52分

 6月16日、ギリシャのチプラス首相は政権に恥をかかせようとしているとして国際債権団を非難した。議会で演説する首相、6月5日撮影。(2015年 ロイター/Alkis Konstantinidis)

[アテネ/ベルリン 16日 ロイター] - ギリシャのチプラス首相は16日、国際債権団が政治的な動機から一段の緊縮策を要求しているとして、ギリシャ政権に「恥をかかせるため」の試みだと非難。債務不履行(デフォルト)の危機が月末に迫る中、支援の条件となる緊縮策の受け入れを依然として拒む姿勢を示した。

これを受けて金融市場では懸念が広がり、欧州株式は一時2月以来の安値に下落した。

チプラス首相は、低所得層に打撃を与える年金削減や増税の要求には政治的な動機があり、「ギリシャ政府だけでなく、国民すべてに恥をかかせる」狙いがあると指摘。

欧州中央銀行(ECB)や欧州連合(EU)が債務軽減を認めないため、ギリシャの財政状況を追い詰めているとも批判した。

一方、欧州委員会のユンケル委員長は16日、ギリシャ支援協議で欧州委が行った提案についてチプラス首相が恣意的に歪曲してギリシャ国民に伝えていると述べ、首相を非難した。

ユンケル氏は、欧州委として医薬品や電気料金に課す付加価値税(VAT)の引き上げに賛成しておらず、防衛支出の「控えめな削減」など他の方法で財政健全化を図るよう提案してきたと語った。

またドイツのメルケル首相は、ギリシャ支援協議で新たな進展はほとんど見られないとの認識を示し、18日のユーロ圏財務相会合(ユーログループ)で妥結するかは明言できないと語った。

メルケル首相は、改革案をめぐりEUや国際通貨基金(IMF)と合意するようチプラス首相に促すため、過去数週間にわたって電話会談を行ってきた。

<デフォルトとグレグジット>

6月末までに支援が再開されなければ、ギリシャは月末に期限を迎えるIMFへの16億ユーロ(18億ドル)の返済ができずデフォルトとなり、ユーロ圏離脱の可能性が現実味を帯びる。

メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)の有力議員、ミヒャエル・グロッセ=ブレメル氏は16日、ギリシャ政府が堅実な改革案を提示しない場合、同国の「グレグジット(ユーロ圏離脱)」は認められるべきだとの意見を表明した。

フィンランドのシピラ首相も、ギリシャがIMFへの債務返済期限である6月末までに債権団と支援協議で合意に達するには「奇跡が必要」と悲観的な見方を示した。

同首相は記者らに対し「状況は厳しく、期限は迫っている。言えるのは、問題が来週解決するには奇跡が必要だということだ。ただ、誰もがまだそれを目指している」と述べた。

関係筋によると、ユーログループの実務当局者らが16日午後、18日の財務相会合の準備のため電話会議を行ったが、新たな進展はなかったという。

*見出しを修正しました。

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、クリミアのロシア領認定の用意 ウクライナ和平で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進

ビジネス

トランプ氏が解任「検討中」とNEC委員長、強まるF

ワールド

イスラエル、ガザで40カ所空爆 少なくとも43人死
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 6
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 7
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 8
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 9
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 10
    トランプに弱腰の民主党で、怒れる若手が仕掛ける現…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 6
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 7
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中