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FOMC後の調整に一服感、国内勢のドル買い意欲強く=外為市場

2015年03月19日(木)12時51分

 3月19日、正午のドル/円は、前日ニューヨーク市場午後5時時点に比べ、ややドル高/円安の120円前半だった。2013年2月撮影(2015年 ロイター/Shohei Miyano)

[東京 19日 ロイター] - 正午のドル/円は、前日ニューヨーク市場午後5時時点に比べ、ややドル高/円安の120円前半だった。米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明文や米連邦準備理事会(FRB)議長会見をハト派的と織り込む動きから一時弱含んだが、国内投資家の押し目買い意欲も強く正午にかけて値を戻し、調整局面に一服感が出ていた。

FOMCは声明で、利上げまで「忍耐強く(patient)」いられるという文言を削除した一方、金利と成長率見通しが引き下げられた。これを受けて米金利が低下し、ドル売りの流れが強まってドル/円は一時119.29円まで急落した。

朝方はアジア時間までにいったん120円前半にまで値を戻したが、日経平均株価が小安く始まった後、一時200円超の下げとなる中、仲値公示にかけては短期筋とみられる売りなどで一時119.67円まで下押しした。

海外時間の流れを受けて「かなりたまっていたドル買いポジションを巻き戻す動きが東京市場の参加者にも出ているようだ」と、あおぞら銀行の為替マーケットメイク課課長、諸我晃氏は指摘していた。

もっとも、日米の金融政策の方向性の違いに変化はないとして「ドルをどんどん売る理由もない。よい買い場とみる人もいる」(国内金融機関)との見方も根強かった。これまでのドル/円上昇局面では、調整らしい調整がなかったことから「いったん修正が入ったということ。基調的にはドル高に戻る」(同)との指摘も聞かれていた。

仲値後は119円後半でじりじりと値を戻し、120円を回復した後はやや落ち着いた値動きとなり、市場では「アジアでのドルの調整売りは一服してきたようだ」(邦銀)との声が出ていた。

東京時間は、午後にかけて120円付近での小動きが続きそうだとの見方が出ていた。ただ、欧州市場やニューヨーク市場でFOMC後の織り込みがあらかた終わるまでにはまだ時間がかかりそうだとの指摘もある。「少なくとも、きょうのニューヨーク時間の引けまでは油断できない」(別の邦銀)との声も出ていた。

<国内投資家の「買い意欲強い」>

午前中の調整局面では、輸入企業や個人投資家による押し目買い意欲の強さが意識されていた。

実需筋の動きとしては、朝方に一部の輸出企業でドルを売る動きが観測されたものの、「仲値にかけ、輸入企業の買いが優勢だった」(国内金融機関)との声が多く聞かれた。ドル119円台では個人投資家の買い注文が多く観測されており、119円半ばに弱含んだ場面では「投機筋の売りに踏み倒された」(国内金融機関)という。

ただ、その後は値を戻し120円台を回復。外為どっとコム総研の調査部長、神田卓也氏は、FOMC前にドルが122円に上昇した局面で個人投資家はかなりドルロングを手放していたとして「投資余力はある。下がれば買う人が圧倒的に多い。投機筋の売りが出ても吸収している」と指摘していた。

ドルの下方向では、119円ちょうどにかけ個人のほか国内投資家による多くのドル買い注文が控えており「119円台は買い、という流れになってきそうだ」(神田氏)という。ただ、どんどん買い上がっていくほどの盛り上がりにはなっていないもよう。

<市場の反応、行きすぎとの指摘も>

FOMC声明やFRB議長会見はハト派的との受け止めが広がる中、市場の反応は行きすぎの可能性があるとの指摘も出ていた。

野村証券のチーフ為替ストラテジスト、池田雄之輔氏は、声明で利上げまで「忍耐強く」いられるとの文言が削除された上、FRB議長が賃金伸び率の上昇は利上げの必要条件でないと明言したほか、ドル高への直接的な警戒が示されなかったことなどから、タカ派的な要素も含まれていたとみている。その上で、6月に最初の利上げ、その後はデータ次第で9月から12月にかけて2回目の利上げというシナリオをFOMCが描いているのではないか、と指摘している。

FOMCの中心メンバーの描く16年末の政策金利は今回引き下げられ1.50─1.75%となる一方、先物市場が織り込む2016年12月のFF金利は1.15%まで低下している点に着目し「このかい離は、市場金利の上昇によって埋められるとの想定が自然だろう」(池田氏)と指摘。米金利低下、米株価上昇の流れの中でドル/円が下落したことで、ドル/円に与える影響は株価より金利の方が大きいことが示されたとみており「6月に向けて米金利がリフトオフ(利上げ開始)を織り込みに行けば、多少株価が崩れたとしても、ドル高/円安となる可能性が高い」としている。

<ユーロ/ドルの下値機運が後退、パリティ割れは「当面お預け」>

FOMCを挟んで急激に進行したドル売りの流れの中で、1.06ドル半ば付近にあったユーロ/ドルは、一時1.1062ドルまで急上昇した。ユーロ/円も128円半ば付近から一時131.67円まで値を上げた。

市場では、欧州中央銀行(ECB)の量的緩和やギリシャ情勢を考えればユーロの上昇余地は大きくないとの見方があるものの、下値機運もそがれたといい「ユーロ/ドルのパリティ割れは夏ぐらい以降に当面、お預けになりそうだ」(国内金融機関)との声が聞かれた。ユーロ/円の上昇は、ユーロ/ドルの値動きにつられた面が圧倒的に強いとして「131円から上は重そう」(同)との見方が出ていた。

ドル/円   ユーロ/ドル ユーロ/円

正午現在   120.22/24 1.0793/97 129.76/80

午前9時現在 120.06/08 1.0846/50 130.23/27

NY午後5時 120.10/13 1.0866/69 130.16/20

(為替マーケットチーム)

ロイター
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