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イエレン米FRB議長の会見要旨

2015年03月19日(木)10時08分

3月18日、イエレン米FRB議長はFOMC終了後に記者会見を行った。ワシントンで撮影(2015年 ロイター/Joshua Roberts)

[ワシントン 18日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は18日、連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に記者会見を行った。要旨は以下の通り。

<「忍耐強く」の文言削除はFRBが性急になることを示さず>

経済状況の改善が続くなか、(4月のFOMCに続く)FOMCでフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標の引き上げが正当化されるとの可能性を排除したくない。

このことを強調しておきたい。誘導目標の最初の引き上げのタイミングは、FOMCが今後入手する情報をどのように評価するかによる。

今回のガイダンスの修正が、われわれが引き上げのタイミングを決定したことを意味していると解釈されてはならない。言い換えれば、「忍耐強く」との文言を声明から削除したことは、われわれが忍耐強くならないことを示しているわけではない。

<労働市場>

雇用創出ペースは引き続き力強い。声明でも言及したが、労働市場のスラック(需給の緩み)は継続的に縮小している。一方で、労働参加率は大半のトレンド予想を下回っており、賃金の伸びもなお鈍く、景気循環的な弱さが長期化していることを示唆している。

明らかに著しい前進を遂げたが、雇用市場が一段と改善する余地は残っている。

<ドル高とFRBの見通し>

今年の成長率見通しは若干下方修正された。ドルに関しては、輸出の伸びが鈍化していることを確認しており、ドル高がその一因である可能性がある。一方で、ドル高は米経済の力強さを一部反映している。

ドル高はまた、輸入物価抑制の一因だ。これは現時点で、少なくとも一時的にインフレ率を押し下げている。われわは海外での動向を勘案している。

今回示された見通しが軟調な内容でないということを認識することが重要だ。

<インフレ>

インフレ指標についてももちろん注目している。エネルギー価格の下落やドルの下押し圧力により、インフレ率が極めて低い水準にとどまると予想している。

われわれは賃金の伸びを注視している。また賃金の伸びが加速しておらず、加速しないかもしれない。これが利上げの前提だとは言わない。だが賃金の伸びが加速すれば、少なくともインフレ率が時間とともに上昇する兆候となる。

われわれはインフレ期待を注視する。調査では安定していることが示されており、これが継続すると見込んでいる。

<金利見通しの下方修正>

インフレ見通しで大幅な下方修正があった。長期失業率見通しも引き下げられ、FRB当局者が現時点で、従来の想定より多くのスラック(緩み)が経済に存在すると判断したことを示している。

これら両方の要因は、フェデラルファンド(FF)金利見通しの下方修正を示唆していると思う。

<向かい風は後退しつつある>

経済はトレンドを上回る成長を遂げており、労働市場は改善している。長い間経済の足かせとなっていた向かい風の一部は、弱まり始めている。これがFOMCが入手する指標を判断し、適切な利上げ時期を検討できることを望む理由だ。

<インフレとエネルギー>

インフレ率は、主にエネルギー価格の下落を反映し、FRBの長期目標を下回る水準までさらに低下している。輸入物価の下落もインフレ率の上昇を抑制してきており、最近のドル高を踏まえると、今後数カ月この状況が継続する公算が大きい。私と他のFRB当局者は引き続き、こうした一時的な要因がもたらす影響が消失することを見込んでいる。さらに、労働情勢の一段の改善に伴い、インフレ率は中期目標の2%に向け緩やかに回帰すると想定している。

<6月利上げの可能性>

再度強調したい。本日のフォワードガイダンス変更は、FOMCが利上げ開始時期を決定したことを示していると解釈されるべきではない。文言変更は、とりわけ6月に必ずしも利上げを開始することを意味しない。だがその可能性は排除できない。

<ドルによる経済の足かせ>

ドルによる経済の影響について、提供できる量的推計はないが、純輸出が今年、見通しの顕著な足かせとなることは確実に見込める。

だが状況に基づいて考える必要がある。米景気見通しには数多くの要因が影響を与える。これが成長見通しへの足かせになる一方で、FOMCは総じて、とりわけ民間支出に十分な力強さがあると引き続き判断しており、それでもトレンドを上回る成長を見込んでいる。

<バブル>

一部社債市場でスプレッドが著しく低水準となっている状況を確認している。

われわれはより広義において、金融安定に対する脅威の可能性について見極めようとしており、資産価値のほか、信用の伸びなども注視している。

金融安定に関する広範にわたる指標を考慮すると、現時点での脅威は穏やかというのがわれわれの総合的な判断だ。

<市場に確実性は提供せず>

われわれは確実性を提供できないし、提供すべきでもない。なぜなら、今後の経済動向は不確かだからだ。市場参加者は、まさにわれわれが行っているように、入手する指標を見極め、金融政策がどうあるべきか予想を立てるべきだ。

<リスク均衡したら利上げ>

われわれはもちろん、リスクが均衡する状況になれば、利上げする可能性がある。

われわれは労働市場が一段と改善することを望んでいる。また経済が2%のインフレ目標を達成できる軌道にあるとの妥当な自信を得たい。

<利上げはどの会合でもあり得る>

どのFOMC会合も決定はあり得る。利上げを決定した場合、質問に答え、さらなる説明を行うことが適切だと考える。われわれは長期にわたり、会合後に電話会見を開く能力を持ち合わせている。金融危機時も、私の前任者によりこの能力は幾度も活用された。われわれはこの能力を維持しており、必要なら活用すると見込んでいる。

<ポートフォリオの規模縮小>

いったん利上げを開始した後、債券の再投資を縮小あるいは停止するまでどの程度時間がかかるかは現時点で決まっていない。状況の進展を見て委員会があらためて検討し、後ほど決定する。

今後数年間にバランスシートから大量の国債が消えていく。向こう2年間には約8000億ドルが満期を迎える。われわれはこの方法でポートフォリオの規模を縮小していくことを見込んでいる。

<弱い生産性>

生産性は持ち直すと予想している。FRBが示したより長期の成長見通しから、FOMC参加者が生産性が現在の水準から上向くと確信していることが確認できるだろう。ただ、生産性の弱い伸びが持続すれば、生活水準を悪化させ、実質賃金の上昇や一般世帯の生活水準の改善を遅らせる公算が大きい。

<2012年9月のFOMC情報漏れに関して>

この件で再調査が始められたと報告を受けている。調査に関する詳細を述べることは差し控えるが、われわれは調査を歓迎しており、結論が出るのを待ち望んでいる。この件で質問が出ている議員に対して状況報告をすることを計画している。われわれは求められている情報を提供し、協力するつもりだ。

<透明性とガバナンス>

われわれは透明性のある中央銀行だ。議会がわれわれの金融政策に関与する案を検討していることに関しては、1978年に議会自体が好ましくないと判断した。経済不振につながるということだ。

国にとって最善の利益と考える金融政策判断を責務に沿って行う独立性を中銀に与えれば、インフレ率の低下とマクロ経済状況の安定化につながることが世界的に示されている。私はこのことを非常に強く感じる。

金融政策ルールは有益と考え、長い間適切な政策スタンスが何かを検討する際のベンチマークにしてきた。

しかし、金融政策判断において非常に重要な多くの要素を考慮しない単なる数学的なルールに中央銀行を縛ることはばかげており、反対する。

投票やFRBの構造に関しては多くのアイデアが浮上している。私の考えではFRBはうまく機能している。現在のシステムは数十年前に議会が導入した。システムが壊れているとは考えておらず、変える必要はない。もちろん、検討するのは議会次第だ。

*重複を削除します。

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