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FOMC声明「忍耐強く」削除し利上げに布石、先行きには慎重

2015年03月19日(木)11時04分

3月18日、米FRBはFOMC声明で、金融政策の正常化に関し「忍耐強く(patient)」いられるとした文言を削除。写真はワシントンで会見するイエレンFRB議長(2015年 ロイター/Joshua Roberts)

[ワシントン 18日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は18日まで開催の連邦公開市場委員会(FOMC)後に公表した声明で、金融政策の正常化に関し「忍耐強く(patient)」いられるとした文言を削除し、約10年ぶりとなる利上げに道を開いた。

一方で、成長率やインフレ率、政策金利見通しを軒並み引き下げるなど、米景気の先行きに関してはより慎重な姿勢を示唆した。

同時に公表されたFRB当局者の経済見通しでは、2015年末時点の適正なフェデラルファンド(FF)金利見通しの中央値が12月時点の1.125%から0.625%に大幅に引き下げられた。

これに加え、FRBが言及した経済をめぐる懸念も合わせ、金融市場では予想よりもハト派的との受け止め方が広がり、利上げ時期予想は年央から秋に後ずれした。

イエレン議長は会見で「忍耐強くの文言を声明から削除したからといって、われわれが忍耐強くならないというわけではない」と述べた。

FOMCを受けた市場の反応は、株が大幅高となる一方、原油価格は最大で5%上昇。ドルは主要通貨に対し急落し、米10年債利回りは3月2日以来初めて2%の節目を割り込んだ。

経済見通しでは、2015年のインフレ率見通しが引き下げられたほか、成長率予想も下方修正された。

声明は「インフレ率は長期目標を一段と下回った」と指摘し、エネルギー価格の下落を背景に、インフレ率が予想を下回って推移しているとの懸念を再度表明した。

バイニング・スパークスの首席エコノミスト、クレッグ・ディスミューク氏は「物価、もしくは賃金圧力は見受けられない」とし、「6月利上げの可能性がなくなったわけではないが公算は小さく、利上げ開始時期としては9月が最も確率が高いと考える。年内に1、2回の利上げがあるかもしれない」と述べた。

FRBは、4月利上げの公算は引き続き小さいとの見方を示し、金利の道筋に関するフォワードガイダンスの変更は、FRBが利上げ時期を決定したことを示しているわけではないと説明した。ただ、イエレン議長は、6月利上げの可能性も排除できないと述べている。

一方でFOMC声明は、いかなる決定も指標次第と強調することで、年内より遅い段階での利上げ開始を可能にする十分な柔軟性を残した。

声明は「労働市場が一段と改善し、インフレ率が中期的に目標の2%に回帰するとの妥当な自信が得られた際に、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を引き上げることが適切と、委員会は予想している」とした。

<経済指標は強弱まちまち>

利上げへの布石を打った格好だが、FRBは引き続きまちまちの経済指標に頭を悩ませている。雇用創出は力強く成長は継続し、米国内の消費需要も健全だが、原油安や急ピッチのドル高は、FRBが2%のインフレ目標からなお程遠いことを示唆している。

声明では、経済成長は「幾分緩やかになった(moderated somewhat)」とし、「経済活動はしっかりしたペースで拡大している(has been expanding at a solid pace)」としていた12月声明から景気判断を下方修正した。

エコノミストや投資家は、FRBが金利に関する決定を会合ごとに判断する段階へと移行する兆しとして、「忍耐強く」を削除するかどうかに注目していた。

イエレン議長は会見で「本日のフォワードガイダンス変更は、FOMCが利上げ開始時期を決定したことを示していると解釈されるべきではないとあらためて強調したい」とし、「文言変更はとりわけ6月に必ずしも利上げを開始することを意味しない。だがその可能性は排除できない」と語った。

今回の決定に反対票は出なかった。

*本部中の表記を修正して再送します。

ロイター
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